上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ11 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 55】

慢性膵炎の急性増悪.Exacerbation of chronic pancreatitis.



日本膵臓学会が定める慢性膵炎の診断と検査基準は,1:腹部超音波検査にて膵臓の石灰化あり→確定診断,石灰化なし→2:CT検査にて膵臓の石灰化→確定診断,石灰化なし→3:ERCPにて不均一な(部位により所見の程度に差があること)分枝膵管の不規則な(膵管径や膵管壁の平滑な連続性が失われていること)拡張(頭部で5mm,体尾部で3mm以上)あり→確定診断,主膵管閉塞の場合は乳頭側膵管の拡張あり→確定診断,膵管の拡張なし→4:セクレチン試験で重炭酸塩濃度を含む2因子以上の低下あり→確定診断,重炭酸塩濃度を含む2因子以上の低下なし→5:病理組織診断にて膵実質の減少と線維化あり→確定診断.
 図11と図12で膵頭部に石灰化があり(▲),図3〜図6にて膵管の拡張(↑)があり慢性膵炎である.図5〜図12で膵周囲に液貯留と浮腫があり(△)慢性膵炎の急性増悪である.図4でIVCが虚脱しており強い脱水がある.1週間の保存的治療で軽快した.








参考症例 1(慢性膵炎):飲酒歴の長い40歳男性.膵炎のため過去に数回の入院歴がある.著明に拡張した膵管(↑)と無数の膵石(▲)を示している.膵実質は薄くなり膵管壁を構築するだけで,著明な萎縮を呈している.





参考症例 2(慢性膵炎):84歳男性.高血圧と痛風以外に特に既往歴はない.膵管の拡張を認めず,膵実質の石灰化を示している.図AはMR膵管造影で,膵管の拡張はない.





文献考察:慢性膵炎の診断基準(日本膵臓学会 慢性膵炎臨床診断基準 2001:表1〜3,図1,2)
【内科疾患の診断基準病型分類・重症度】 肝・胆・膵 慢性膵炎の診断基準・病型分類・重症度
  Author:大槻眞(産業医科大学 消化器・代謝内科)
  Source:内科(0022-1961)95巻6号 Page1183-1189(2005.06)

拡大画像を見る

拡大画像を見る

拡大画像を見る

拡大画像を見る

拡大画像を見る

 【 ←前の問題 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】