上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ11 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 54】

急性膵炎.Acute pancreatitis.



膵臓の腫大はなく,体部(B)と尾部(T)周辺に脂肪組織の濃度上昇を認めないが,図5と図6で十二指腸(Du)背側に液貯留があり(▲),図6〜図12で膵頭部(H)周辺の後腹膜腔に浮腫を認め(△),膵頭部に限局した急性膵炎である.






5日間で腹痛は軽減した.下段画像は6日目のCTで,膵頭部周辺の浮腫や液貯留は消失している.




参考症例(アルコール性膵炎): 53歳男性.飲酒歴は30年前からウィスキーを毎日グラス3杯だが週末はボトル1本を飲酒する.10年前に急性膵炎で2週間入院したことがある.3時間前に急激に発症した上腹部痛のため来院した.
 膵腫大はない.図3〜図7で膵周囲脂肪組織の濃度上昇を認め(△),図5〜図7でGerota筋膜の肥厚を認める(▲)ので急性膵炎と診断できる.この画像はウィンドウ幅500,ウィンドウレベル77で作成されているから△の軽度の浮腫所見を認識できるが,ウィンドウ幅が300前後だと遊離ガスや軽度の浮腫所見は認識できないことがあり,急性腹症のCTはウィンドウ幅を500前後で作成し,遊離ガスや軽度の浮腫を見落とさないような画像にするべきである.








文献考察:重症度判定:厚生省研究班平成11年度報告書から(表)
【増え続ける重症急性膵炎 診断と治療の最近の進歩】 急性膵炎の重症度をどのように判定するか
  Author:広田昌彦(熊本大学 医学部 第2外科 教室), 小川道雄
  Source:外科治療(0433-2644)88巻1号 Page22-29(2003.01)
  Abstract:重症急性膵炎は,1つや2つの指標で重症度を決めることが不可能であり,多くの指標を総合して重症度を判定する必要がある.難治性膵疾患調査研究班では,18の予後因子からなる重症度スコアを作成し,急性膵炎の重症度を重症度スコアに基づいて5段階に層別化した.Stage 0, 1は各々軽症,中等度に相当し,Stage 2以上が重症急性膵炎である.重症度スコア2〜8点をStage 2, 9〜14点をStage 3, 15〜27点をStage 4とすると,入院時のStage 0では1%, 1では3%, 2では8%, 3では48%, 4では80%の致死率であり, 入院時のStageは急性膵炎の予後をよく反映する.

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