上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ11 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 51】

慢性膵炎の急性増悪・膵尾部壊死.Exacerbation of chronic pancreatitis with necrosis of tail.



図5〜図8で膵周囲に大量の液貯留を認め(※),図4で体部(B)が腫大しており,膵全体がやや低濃度で不均一だから急性膵炎である.図4と図5で膵管の拡張を認める(▲)ので慢性膵炎の急性増悪である.図3〜図5では膵尾部の造影効果をほとんど認めず(↑),壊死に陥っている.呼吸不全を合併し重症となり,2週間の人工呼吸器管理を要する状態になったが,以後は順調に経過した.






下段画像は2年後に軽症膵炎で再来院した時のCT.膵臓に石灰化を認めないが,膵管の拡張(▲)があり慢性膵炎である.膵尾部が欠損しており(↑),上記の壊死所見を裏付ける.





参考症例(膵尾部壊死):50歳男性.アルコール性膵炎で,↑は膵尾部壊死を描出している.壊死があるにもかかわらず1週間で食事が可能となり,10日目にERCPを行った(図A).↑は造影剤の漏出を示し,CTの壊死所見を裏付ける.しかし,壊死部を汚染させ感染性膵壊死を起こす可能性があり,膵壊死を疑ったら早期のERCPは禁忌である.幸いにも感染を合併せず順調に経過した.









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文献考察:我が国における単純CTによる重症度判定基準(表)
【肝胆膵の救急画像】 急性膵炎 CTを中心とする病態把握
  Author:片岡慶正(京都府立医科大学 消化器病態制御学), 高田龍介, 金光大石, 伊藤令子, 元好朋子, 阪上順一, 光藤章二, 岡上武
  Source:消化器画像(1344-3399)6巻2号 Page261-272(2004.03)
  Abstract:急性膵炎そのものの存在診断は単純CTで十分であるが,予後を大きく左右する膵壊死の有無とその範囲の質的診断には造影CTが不可欠である. 臨床の場においては救命率を向上させるために急性膵炎の重症化阻止とその対策を念頭に置き,経過において想定される病態と合併症に留意して,単純CTと造影CTの施行時期を誤ることなく使い分けることが重要である.又,最近では我が国で開発され臨床応用の進む動注療法の適応と施行時期を考慮に入れた浮腫性膵炎と壊死性膵炎のCTによる鑑別が早期重症化に伴う致死率低下に貢献し,更には膵感染症の早期発見が救命率の改善に大きな役割を果たしている.

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