上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ10 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 48】

十二指腸と小腸の同時性胆石イレウス.Simultaneous gallstone ileus of duodenum and small intestine.












1)図1〜図3で肝内胆管内にガス(pneumobilia)があり,図6〜図8で胆嚢(GB)内に胆石(↑)とガスがある.2)図1〜図15で胃が拡張しており,その原因は図6〜図9の十二指腸内に嵌頓した結石(▲)である.3)図20〜図23で小腸が拡張している.図18と図19で結石を認め(△),図20の1から小腸の拡張が始まり図20の7へと進展する.図17と図18に虚脱した小腸(白矢印)があり,図18と図19の結石(△)が小腸閉塞の原因である.従って,診断は十二指腸と小腸の同時性胆石イレウス(gallstone ileus)である.図Aは手術で摘出した結石と胆嚢(GB).












参考症例(胆石イレウス):77歳男性.6ヶ月前に胆石を指摘されている(図1).前日に上腹部痛と嘔吐が出現し持続するので来院した.図1の6ヶ月前のCTで胆嚢内に結石がある.図2〜図4では胆嚢(GB)内結石は消失し,かわりに泡沫様のガスが存在し,図4の↑は胆嚢と十二指腸(DU)間の瘻孔(fistula)の可能性がある.下腹部の図6〜図14では小腸が拡張し,図8と図9には結石を認める(△).虚脱した小腸(SB)があり,図9の1から拡張し始め,図10の2から図6の14へと伸展するので結石が小腸閉塞の原因である.従って診断は胆石イレウスとなる.手術で盲腸から100cmの部位で2.5cm大の結石が嵌頓しており摘出した.胆嚢は癒着が強いため摘出せず放置した.














文献考察:十二指腸に嵌頓した胆石イレウスBouveret's syndrome
1)十二指腸水平部に嵌頓した胆石イレウスの1例
  Author:森美樹(郡上中央病院 外科), 堀谷喜公, 松本真介, 安村幹央, 山田卓也, 阪本研一
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)23巻1号 Page115-119(2003.01)
要旨:胆石イレウス本邦集計111例中,十二指腸例(Bouveret症候群)は13(1.2%)例(表1)であった.他部位に比べ高齢者が多く(他部位68.5歳:70.7歳),胆石が大きく(他部位3.9cm:5.0cm),自然排石例がなく(他部位11%),死亡率が高い(他部位2.3%:15.4%)であった.

2)Bouveret症候群の1例
  Author:金澤伸郎(東京都老人医療センター 外科), 平田友美, 山口高史, 前田徹, 樋口芳樹, 黒岩厚二郎
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)65巻6号 Page1641-1645(2004.06)
  Abstract:胆石症の合併症としての胆石イレウスは比較的稀とされているが,その中でも十二指腸への胆石嵌頓が原因で胃内容排泄障害をきたした症例はBouveret症候群と呼ばれている.日本では未だ少数例しか報告されていない.症例は70歳,男性.悪心,嘔吐を主訴に来院した.右季肋部に軽度の圧痛を認めた.10年前に胆石を指摘されていた.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚部に嵌頓する結石を確認した.内視鏡下の結石除去は不能だったため外科的治療が施行された.手術は結石嵌頓部にて十二指腸切開,結石を除去し閉鎖,胆摘とともに上十二指腸角部に存在した胆嚢十二指腸瘻を一期的に閉鎖した.2個の結石を摘出し,その最大径は25mmだった.術後,腸閉塞を併発したが保存的に軽快,術後50日で退院となった.本症は稀なBouveret症候群の1例であり,若干の文献的考察を加え報告する(著者抄録).
追記:本邦集計例30例(表2).

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  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ11 【症例 RE 51】

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