上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ10 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 46】

両側性肝内結石.Bilateral intrahepatic stones.






図7〜図11の右側肝内結石(▲)は容易に発見できる.肝臓の左葉外側区域が萎縮していることに気づき,その原因を検索すると図2〜図4の↑が拡張した肝内胆管内の結石であり,両側性肝内結石である.画像では指摘できないが,発熱の原因は胆管炎を併発しているからであろう.






下段の図1〜図13は造影CTである.左側肝内結石は図2〜図4でなんとか認識できる(↑)が,右側は図5〜図8で胆管拡張の可能性を指摘できる(▲)程度で,結石は全く認識できない.結石,腸管内異物や腸管の出血性壊死のCT診断には単純CTが不可欠であることが多い.










文献考察:肝内結石症例の自然経過(表)
【肝内結石症研究の最前線】 肝内結石症例の自然経過
  Author:古川正人(国立長崎中央病院), 佐々木誠, 大坪光次, 八坂貴宏, 中道親昭, 白浜敏
  Source:胆と膵(0388-9408)19巻11号 Page1021-1027(1998.11)
  Abstract:診断時症状がなく治療されなかった原発性肝内結石症122例を最長15年間(平均10年1ヵ月)経過観察した.14例に症状の発症を認めたが,無症状108例と年齢,性差はなく,症状発症迄の期間は9ヵ月から7年4ヵ月(平均3年5ヵ月)であった.症状発症形式は,肝膿瘍, 胆管炎, 落下結石, 肝内胆管癌併発であり,経過中,肝内胆管拡張の増強と肝外胆管拡張の増強をそれぞれ2例に認めた.有症状化例の肝葉萎縮(13例)は,無症状例(14例)に比して有意に高頻度で,その予後は,肝内胆管癌死2例,肝不全死1例,11例が生存中であった.無症状例では,15例の死亡例全例が他病死であった.以上より,肝葉萎縮が症状発症および肝内胆管癌併発の危険因子であることが示唆されたが,肝内結石症における自然経過の確率には,さらに長期間の経過観察が必要である.

拡大画像を見る

 【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】