文献考察1):先天性胆道拡張症 先天性胆管拡張症,先天性胆道拡張症(解説)
Author:宮崎逸夫(金沢大学 第2外科), 橋本哲夫
Source:日本臨床(0047-1852)別冊肝・胆道系症候群 肝外胆道編 Page118-126(1996.02) 要旨:総胆管を含む胆道系が何らかの原因で種々の程度に拡張し,様々の病態を呈する疾患をいう.従来総胆管の限局性拡張のみが注目されていたため,先天性総胆管嚢腫(総胆管拡張症)(choledochal cyst)と呼称されていたが,最近では総胆管が円柱状(紡錘状)の拡張,あるいはきわめてわずかの拡張を示すにすぎないものもあり,これらを総称して先天性胆道拡張症(congenital dilatation of bile duct:CDBD)と呼ぶのが一般的となっている.本症にはきわめて高頻度(ほとんど全例)に膵管胆道合流異常の合併が認められる. 戸谷分類の型が80-90%と圧倒的に多く,A型が次に多く7-19%を占める.本症は東洋人,なかでも日本人に多い疾患であり,男女比は1:3-4と女子に多い.症状は,本症の三主徴として腹痛(70-80%),黄疸(45-55%),腫瘤触知(24-35%)がいわれているが.これら三主徴を備えた例は10-30%にすぎない.
合併症として肝機能障害,急性ならびに慢性膵炎(17%), 膵石症(7.3%),胆石症(21.6%),胆嚢炎・胆管炎,胆道穿孔,胆道癌などがある.胆道癌の発症頻度はおよそ15-30%で,診断年齢は通常の胆道癌より10歳以上若い.
文献考察2):先天性胆道拡張症の分類(図) 先天性胆道拡張症の定義と分類
Author:戸谷拓二(香川医科大学 小児科)
Source:胆と膵(0388-9408)16巻9号 Page715-717(1995.09) 型:型のうちIa,Ic型は普遍型common typeとも呼ばれるもので,その特徴は総胆管が嚢胞状あるいは円筒状に拡張し,肝内胆管の拡張はみられない.総胆管末端部(膵管との合流付近)は嚢胞状拡張で狭窄を示すが,円筒状拡張ではその程度が軽度である.どちらもほぼ全例,膵・胆管合流異常を合併しており,嚢胞状は直角型,円筒状は鋭角型の合流を示す傾向にある.Ib型は分節型segmental typeとも呼ばれ,合流異常はなく胆管切除後,肝管・胆管吻合術が可能な型であるが,きわめて稀である.II型:II型は憩室型diverticular typeで,きわめて稀である.憩室は総胆管のみならず,肝内,肝外の胆管のいずれの場所にみられてよいが,ふつう合流異常を伴っていない.III型:III型は胆管瘤choledochoceleとも呼ばれ,十二指腸壁内の総胆管末端部に拡張があり,乳頭閉塞症状を示すことが多い.きわめて稀で,合流異常を合併することも少ない.しかしこれまで,いろいろな亜型が報告されており,その治療法などは症例を蓄積して考察する必要がある.IV型:IV型は多発型multiple typeであるが,肝内・肝外ともに拡張がみられるIV-A型と肝外だけに2コ以上の拡張をみるIV-B型に分けられる. IV-A型の頻度は高くいわゆる総胆管嚢胞のうち70%を占めている.肝内胆管拡張のないIa,c型と同様,合流異常を100%近く合併し,また臨床症状もIa,Ic型とほとんど差がない.しかしその治療には,拡張した肝内胆管から胆汁が淀みなく流出できるような配慮が必要である.肝内胆管の拡張は左側優位で,その拡張も嚢胞型と円筒型に分類され,その頻度は前者が30%,後者が70%である.多くの円筒状拡張は術後縮小する傾向を示し,その拡張は二次的に拡張した可能性も高い. IV-B型はきわめて稀で,本型で胆管瘤を合併するものは,合流異常をみることは少ない.V型:V型は肝内胆管のみが拡張したもので,単発,多発型に分けられるが,先天性肝内結石症と関連の深い疾患と考えられる.ふつう膵・胆管合流異常を伴わない.また,この中にCaroli病を含めてもよい.
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