上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ10 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 46】

急性胆嚢炎・含気性胆石.Acute cholecystitis with gas-containing stones.



胆嚢(GB)の腫大はないが,図4〜図6で漿膜下浮腫により壁肥厚を呈し(△),図7〜図9で周囲脂肪組織の濃度上昇を認め(▲),図4〜図6の白矢印は胆嚢に接する肝臓辺縁の濃度上昇であり,炎症が波及し充血していることを意味する所見であり急性胆嚢炎である.図3〜図5で胆嚢内にガス像(↑)を認めるが,前方へ浮き上がってニボーを形成しないガスは胆石内のガス(含気性胆石)の可能性が高い.気腫性胆嚢炎の可能性は低いと判断しPTGBDを施行した.図AでPTGBD後もほぼ同部位にガスを認める(↑).胆嚢摘出を行った.病理:chronic cholecystitis.







参考症例 1(含気性胆石):46歳男性.急激に発症した上腹部痛のため来院. 図1〜図3で胆嚢内にニボーを形成しないガスがあり(↑)含気性胆石が充満している.図4は2ヶ月後のDIC/CTで,ガスが同様に分布している(白矢印).




参考症例 2(含気性胆石):49歳男性.上腹部痛のため来院した.DIC/CTである.含気性胆石内の星芒状のガス△はMercedes-Benz sign と呼ばれる.


文献考察:含気性胆石
含気性胆石
  Author:黒崎敦子(虎の門病院(共済)), 竹内和男
  Source:日本臨床(0047-1852)別冊肝・胆道系症候群 肝外胆道編 Page394-396(1996.02)
要旨:含気性胆石(gas-containing gallstones)とは,結石内部にガスが存在する胆石を言う.胆石の形成段階で急激な固形化や結晶化が起こり,結石内部に生じた陰圧により結石内部にガスを伴い星芒状の亀裂が形成されると言われ,ガスの組成はほとんどが窒素で,少量の酸素と二酸化炭素とされている.腹部単純X線写真で特徴的な,三放射線状の”Mercedes-Benz”signを呈する胆石として古くから知られている.CTではその形は必ずしも星芒状とは限らず,卵円形もしくは不整形を示す場合も少なくない.結石自体のdensityが胆汁とほぼ等しい場合単に胆嚢内のガスとして描出されるので,気腫性胆嚢炎の診断の際注意を要する.

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