上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ10 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 50】

Mirizzi 症候群.Mirizzi’s syndrome.



図2と図3で肝内胆管が,肝臓辺縁と肝門部間の中心線を越え肝臓辺縁近くまで認識できる(▲)ので拡張している可能性が高い.肝門部より尾側の総胆管(CBD)に拡張を認めないので肝門部での胆管閉塞の所見である.胆石(↑)を含む胆嚢による圧迫,すなわちMirizzi 症候群かまたは肝門部胆管腫瘍の可能性を考慮する.図9はERCP画像で,肝内胆管の拡張(白矢印)と胆嚢による総胆管の圧排(△)を認めMirizzi’s syndromeである.手術で胆嚢の圧排による総胆管壁の欠損を認め,いわゆる胆嚢胆管瘻bilio-biliary fistula(下記解説)であった.






参考症例(Mirizzi 症候群):72歳男性.15年前に胆石を指摘されたが放置している.閉塞性黄疸(T-Bil;6.1mg/dl)のため来院した.図1で肝内胆管が肝辺縁近くで認識される(▲)ので拡張していると解釈する.図7〜図9で尾側総胆管(CBD)の拡張はないので肝門部での閉塞と診断する.図Aの胆道造影で同所見が確認され(△が狭窄部位)手術となった.胆嚢による圧迫が原因であった.病理:subacute cholecystitis with xanthogranulomatous inflammation.no malignancy.










文献考察:Mirizzi症候群(図)
1)大倉史典,山川達郎,酒井滋:Mirizzi症候群,Biliobiliary fistula,Confluence stone.肝胆膵 27:809−812.1993.
要旨:Mirizzi症候群とは.胆嚢頚部あるいは胆嚢管に嵌頓した結石の圧迫あるいは炎症波及により総肝管の狭窄,閉塞をきたし胆管炎,黄疸などの症状を伴うものである(図:a).胆嚢胆管瘻(Biliobiliary fistula)は胆嚢胆道間に形成された内胆汁瘻でまれなものである(図:b).原因としては大部分が胆石によるもので,長年の結石の圧迫と繰り返す炎症により瘻孔が形成される.合流部結石(Confluence stone)は,三管(胆嚢管,総肝管,総胆管)合流部にまたがって存在する結石のことであるが(図:c),胆嚢頚部に嵌頓した結石が炎症を繰り返すうちに胆嚢の萎縮と壁の肥厚に伴って胆嚢管内に押し出され,三管合流部に達するものである.

文献考察:Mirizzi症候群の定義(表)
2)【最新の胆道炎治療】 Mirizzi症候群とLemmel症候群
  Author:染谷哲史(札幌医科大学 医学部第一外科), 木村康利, 曽ヶ端克哉, 野村裕紀, 秦史壮, 桂巻正, 平田公一
  Source:消化器外科(0387-2645)27巻13号 Page1915-1923(2004.12)

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