上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ9 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 43】

胆嚢捻転.Torsion of gallbladder.








図7〜図15のGBは図6と図17で盲端になり,周囲に胆嚢らしき臓器を認めないので腫大した胆嚢である.図6〜図8では腹水を認める(△).胆嚢壁の造影効果は極めて弱く,著明な肥厚を示し(図12),図8〜図12で壁内の高濃度の部分(↑)は血腫を示唆し,さらに最下段の単純CTでは肥厚した壁はやや高濃度を示し(▲)出血性壊死を疑う.注目すべきは,胆嚢(GB)が肝臓と接触する部分を全く認めないから浮遊胆嚢であり,すなわち胆嚢捻転と診断する.正確に診断され緊急手術が行われた.胆嚢は時計方向に180度捻転し,真っ黒に壊死に陥っていた(図A).










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文献考察:胆嚢捻転症,本邦集計267例(表)
MRCPにて術前診断し得た胆嚢捻転症の1例
  Author:池田剛(尾鷲総合病院), 五嶋博道, 谷川寛自, 根本明喜, 林実夫, 川口達也
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)60巻11号 Page2996-3000(1999.11)
  Abstract:83歳女.全身倦怠感,右上腹部痛を主訴として来院.右上腹部に弾性軟で可動性良好の10×8cmの腫瘤を触知した.超音波検査で胆嚢は腫大し,壁は全周性に肥厚し,CTでは正中腹壁直下に位置していた.DICでは総胆管の軽度拡張を認めたが胆嚢は造影されなかった.MRCPで胆嚢は頸部で内下方に偏位しており,胆嚢の位置異常が明瞭に描出され胆嚢捻転症と診断した.開腹すると胆嚢は暗赤色で腫大し,時計方向に180度捻転しており,単純胆摘を施行した.本邦267例の報告では,70歳代の女性に好発し,臨床所見では一般の急性腹症に比し発熱の頻度が少ない.術前に胆嚢捻転症と診断されたものは11.2%であったが,最近10年間では23.5%と向上してきている.診断はUS,CT所見を熟知するとともにMRCPが確定診断に至る有力な診断法となることが示唆された.
  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ11 【症例 RE 53】

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