下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 23】

魚骨によるS状結腸穿孔.sigmoid colon perforation by a fish bone



前腹壁直下には遊離ガスを認めない.図10の直腸1から逆行性に追跡すると図1の14から下行結腸となりそうだ.図7〜図9の▲は線状の,骨レベルの高濃度を呈し,S状結腸内の魚骨かchicken boneである.図5と図6の△は腸管外ガス(extraluminal gas)であり,魚骨かchicken boneによるS状結腸穿孔と診断できる.図7の↑は図8の5と重なるので腸管外ガスではない.図9の↑は図8のS状結腸と重なるが,同部位のS状結腸はガスを含んでいないので腸管外ガスの可能性が極めて高い.大腸ファイバー検査を行ったところ,S状結腸に魚骨を認め(図A:▲), 長さ5cmの魚骨を抜去し1週間の抗生物質投与で治癒した.








参考症例(魚骨による回腸穿孔):49歳男性.前日からの下腹部痛のため来院した.体温:37.6℃,下腹部に圧痛を認め,急性虫垂炎の診断で手術したら,魚骨(↑)による回腸穿孔であった(図Aと図B).






文献考察本邦集計271例の検討,CTによる魚骨陽性率は60%
葉季久雄, 井上聡, 渡辺靖夫, 米川甫
術前に診断しえた魚骨による回腸穿孔の1治験例 過去10年間の魚骨による消化管穿孔271例の分析
日本消化器外科学会雑誌34巻11号 Page1640-1644、2001.

要旨:穿孔部位は食道50例、胃24例、小腸79例、結腸・直腸94例、肛門4例であった。151例に腹部単純X線、155例にCT、93例にUS(腹部エコー)検査が施行され、術後の検討を含め魚骨陽性例はそれぞれ、15.9%、60%、35.5%であった。術前に魚骨と診断された症例はそれぞれ、8.6%、31.6%、12.9%であった。このホームページで魚骨症例を既に10例以上供覧した。CTで90%以上の症例で診断つくはずである。

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