上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ8 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 37】

急性胆嚢炎.Acute cholecystitis.


図4で胆嚢は短軸で5cmを超えず,図2〜図7で長軸も6cm程で,胆嚢の基準値以上の腫大はない.図5で強く造影された部分は粘膜と筋層で,↑のwater densityの部分は漿膜下浮腫(subserosal edema)であると言われる.胆嚢の腫大を認めず周囲脂肪組織の濃度上昇も認めないが,緊満感があり漿膜下浮腫による著明な壁肥厚は急性胆嚢炎(acute on chronic)を強く示唆する.図4〜図6の白矢印は胆石である.抗生物質投与で沈静化後に胆嚢摘出を施行した(図A).病理:慢性胆嚢炎,線維化が強い.






参考症例(Plain CT):59歳男性.5日前から心窩部痛と微熱が続いている.体温:37.9℃,上腹部に圧痛を認めた.胆嚢(GB)の腫大はないが,図3〜図5で周囲脂肪組織の濃度上昇を認め(▲),急性胆嚢炎と診断する.単純CTだから壁所見の評価はできない.胆嚢摘出を行った.病理:acute on chronic cholecystitis.




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文献考察:急性胆嚢炎(acute cholecystitis:図)
Strasberg SM,Clavien PA:Acute calculous cholecystitis.In:Bockus's Gastroenterology,5th Ed.WB Saunders,Philadelphia,2635-2659,1995.

要旨:急性胆嚢炎の機序は,有石性であれ無石性であれ,胆嚢管の閉塞があることと,初期は非細菌性の炎症である.胆嚢管閉塞の原因は胆石が90%を占め,約10%は無石胆嚢炎である.初期炎症を起こす要因は,Lysolecithin,Prostaglandins,platelet-activating factorや過飽和状態の胆汁などが言われる.初期炎症後に細菌感染が加わると思われ,原因菌はE.coli を中心とした腸内細菌群である.

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