上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ7 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 35】

絞扼性小腸閉塞(壊死なし).Strangulated obstruction with no necrosis








図1にも骨盤腔内にも腹水を認めない.図3〜図17の小腸群↑は拡張がなく虚脱しているか軽度の拡張を示しているだけだから追跡してclosed loopを証明することは不可能であるが,図2〜図4の小腸(SB)と比較して壁の造影効果が減弱しており,図4と図5で腸間膜が著明な濃度上昇を示し(▲),図6〜図8では静脈の怒脹(△)を認め,軽度に拡張した腸管はgaslessだから絞扼性小腸閉塞を否定できない.腸管拡張がないか,あっても軽度で,絞扼性小腸閉塞のかなり初期の所見と思われるが,このような症例もあることを念頭に置くべきである.ガストログラフィン造影CTを撮れば,↑の小腸群はガストログラフィンで造影されないだろうから診断はより容易になると期待できる.CT所見で絞扼性小腸閉塞が疑われ手術となった.小腸中央部で索状物により140cm長の小腸がclosed loopを形成し絞扼されていたが,壊死所見はなく索状物切離で虚血所見(図A:術中写真)は改善し,切除は不要であった.













参考症例:食道癌のため食道全摘術の既往のある76歳男性.6時間前に出現した上腹部痛を訴え来院した.体温:36.5℃,腹部は右上腹部に圧痛を認めるのみ.図7で胸水と腹水(※)があり,図1〜図6で拡張はないが壁の造影効果が乏しい小腸群(↑),著明な腸間膜の濃度上昇(▲)と,図4で血管の怒脹を認め(△),絞扼性小腸閉塞と診断し緊急手術を行った.Bandによる絞扼性小腸閉塞であったが,band切離で虚血状態は速やかに改善し小腸切除は不要であった.







  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)5 【症例 GE 22】

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