上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ7 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 32】

絞扼性小腸閉塞(壊死なし).Strangulated obstruction with no necrosis








拡張した小腸の壁は良好に造影され,壁肥厚はなく腸管壊死はないと思われるが,図1で腹水があり(※),拡張した小腸はgaslessであり,図9と図10で腸間膜の濃度上昇を認め(▲),3所見を認めるので絞扼性小腸閉塞を否定できず図19から追跡を始める.図8の13の次の連続腸管の判断が困難となれば,図9のabは図8のaとb として頭側へ上行すること,図6のcとdも同様に上行することを先に解決しておけば(図6のef もしかり),自然に図8の13→図7の14→図8の15→図9の16となる.追跡困難になったとき,周囲の拡張した腸管の中で確信を持って追跡できる腸管に印を付けておくことが一つのコツである.順調に追跡して図2の33となれば,図15〜図19に印の付いていない拡張した小腸が残ることに気がつく.図15の丸数字1〜図17の丸数字8は約15cm長のclosed loopであり,図16で虚脱した小腸(SB)を認め,図16のHが単純閉塞の起点であり,まだ壊死に陥っていない絞扼性小腸閉塞の診断がついた.腹部所見で筋性防御を認めないが正確にCT診断され手術となった.盲腸から80cmの部位で,bandによる20cm長の回腸がclosed loopを形成し,絞扼されていたが軽度の虚血所見であり,band切離後改善し腸管切除は不要であった.













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文献考察:腸閉塞はいつ外科に送るか
【イレウス診療のpitfall いつ外科に送るか】 絞扼性イレウスの診断
  Author:高崎秀明(日本医科大学 第一外科), 田尻孝, 鶴田宏之
  Source:臨床消化器内科(0911-601X)19巻9号 Page1251-1257(2004.07)
  Abstract:絞扼性イレウスを疑う所見を,症例を提示しながら解説した.急激に発症するイレウスでショックとなった場合は典型的な絞扼性イレウスで,内科医も迷うことなく外科に送ることであろう.問題は癒着性イレウスと鑑別が困難な症例で,(1)鎮痛剤を頻回に使用しても疼痛が改善しない場合,(2)CTスキャン,超音波検査にて腹水の貯留,増加を認めた場合,(3)CTスキャンで腸間膜の異常伸展,渦巻状変化,(4)造影CTスキャンでenhanceされない腸管壁の存在が確認できた場合,(5)long tubeを挿入し,イレウスが解除しないのに排液量が少ない場合,あるいはlong tubeが先進しない場合などは絞扼性イレウスである可能性が高いので,至急外科に相談すべきである(著者抄録) .
追記:癒着性イレウスと絞扼性イレウスとの鑑別(表).

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