文献考察:麻痺性イレウス(paralytic ileus)
【イレウス 診断と治療の進歩】 イレウスの原因とその病態
Author:冲永功太(帝京大学 医学部 外科), 安達実樹, 味村俊樹, 松田圭二, 福島亮治
Source:消化器外科(0387-2645)26巻7号 Page1059-1064(2003.06)
Abstract:イレウスは,腸管内容の通過が障害された状態と定義され,様々な原因によって起こり,器質的病変のある機械的イレウスと器質的病変のない機能的イレウスとに分けられる.また通過障害の部位によって小腸と大腸に分けられ,各々単純性か,血行障害を伴う複雑性かに分類される.小腸イレウスの中では,手術後の癒着によるイレウスが大多数を占め,単純性イレウスが多いが,複雑性(絞扼性)イレウスも起こる.特に絞扼性イレウスは重篤な病態であり,早期の診断と的確な治療が要求される.大腸イレウスでは,大腸癌による閉塞が多数を占める. 追記:機能的イレウス
(1)麻痺性.麻痺性イレウスを起こす原因には表に示したように,神経性,代謝性,薬剤性,感染性などさまざまな原因によって起こる.もっとも一般的なものは,開腹術術後の麻痺であり,これが通常より遷延した場合に臨床的に問題となる.また,腹膜炎による麻痺性イレウスでは原疾患の治療を優先する.
(2)血管性.上腸間膜動脈閉塞症あるいは上腸間膜静脈閉塞症などによってもイレウス症状を呈する.
(3)偽性腸閉塞症(pseudo-obstruction).器質的病変がないにもかかわらず,腸管内容の通過が障害されている症候群であり,この定義は機能的イレウスの定義とほとんど同じであるが,ここでいう偽性腸閉塞症(pseudo-obstruction)は「慢性」であることを特徴としている.この病態はさまざまな疾患を含んでおり,家族性と散発性とに分けられる.小腸における障害が多いが,全消化管に及ぶこともある.また,二次的な腸管偽閉塞症は,汎発性強皮症,糖尿病,アミロイドーシス,Chagas病,薬物性などによっても起こる.慢性偽閉塞症は,さらに腸管の病理学的な所見により,1)神経性(neuropathic),2)筋性(myopathic),3)病理学的所見を有しない型と3型に分類される.
|