上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ6 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 26】

空腸軸捻転(腸管壊死なし).Volvulus of jejunum with no necrosis.








結腸の8cm以上の拡張はなく,約5cm大に小腸が拡張しているので小腸の腸閉塞を疑う.腹水はないし拡張した腸管壁もよく造影されているので腸管壊死はないと思われるがgaslessなので絞扼性小腸閉塞の可能性は否定できない.Closed loopの証明ができれば絞扼性小腸閉塞の確定診断となるので拡張した腸管を追跡する.図19の1とAを頭側へ追跡すると,図8の28と、図10のPで閉塞し,closed loopの可能性が高い.次に図9の△は時計方向へ回転する腸管または腸間膜のwhirl(渦巻) sign” であり,図9と図10で虚脱した小腸(SB)を認め小腸捻転の診断がつく.単純閉塞の腸管は図7の丸数字1から始まり,図7で十二指腸(Du)の丸数字8に連続する.すなわち捻転部位は空腸である.正確にCT診断され手術となった.Treitz靱帯より20cmの部位で約100cmの空腸が時計回りに360度捻転していた.所々に漿膜下の出血斑を伴う虚血の所見を認めたが,捻転解除により速やかに改善した.小腸捻転のかなり初期に診断がついたので腸管壊死はなく,腹水や腸間膜の浮腫も見られない症例である.












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文献考察:小腸軸捻転のCT所見(表)
Australas Radiol. 2000 Nov;44(4):464-7.
Computed tomography features of small bowel volvulus.
Loh YH, Dunn GD.

A case of small bowel volvulus in an adult is presented. The established CT signs of small bowel volvulus are discussed. These include an abnormal orientation of the superior mesenteric artery to the superior mesenteric vein; the whirl sign, the triangle sign and the beak sign.PMID: 11103550
追記:triangle signとは,beak signを頂点に,捻転による圧迫により虚脱した小腸が3角形様の形態を示す所見(図:T).
  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ3 【症例 RE 14】

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