上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ5 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 25】

小腸軸捻転(腸管壊死なし).Volvulus of small bowel with no necrosis.






図1〜図6の大量の腹水(※)は何か重大な病態の発生を示唆し,徹底的に原因を追及することが大事である.動脈相のCTだからSMVはまだ造影されていない.図7〜図15の小腸は造影効果は良好だが壁はやや肥厚ぎみである.図7〜図12のSMA分枝(△)は反時計方向に回転し渦巻状になっており,血管のwhirl signであり,小腸軸捻転を意味する重要な所見である.小腸の走行に注目すると図5のaは図8までに360度回転し図7と図8でbと連続し,bはさらに360度回転している.下記文献にはSMAを軸に腸管が回旋し渦巻き状になる所見をwhirl signと呼んでいるが,SMA中枢部での捻転では腸管の渦巻像より血管の渦巻像が際だっている.正確にCT診断され手術となった.腸間膜と腹壁間に癒着がありそれを軸に小腸が捻転していたが腸管壊死はなく捻転解除と癒着剥離を行った.SMA中枢部の捻転だから手術の時期を逸すれば大量の小腸壊死をきたし短腸症候群に陥った可能性が高い.










文献考察:whirl(渦巻き) sign
Radiology. 2003 Jan;226(1):69-70.
The whirl sign.
Khurana B. PMID: 12511670(full text)
要旨:whirl signはCTで,脂肪組織(腸間膜)を背景にSMA(上腸間膜動脈)を軸として小腸が回旋し渦巻き状の腫瘤を呈する所見をいう.Fisherが1981年に最初に報告した症例は,腸管回転異常に合併した中腸軸捻転の症例であった.その後S状結腸捻転例では捻転したS状結腸と間膜を中心にしてS状結腸の輸入脚と輸出脚が周囲を渦巻く所見まで適応されるようになった.腸管切除後に循環障害を伴わない180度程度の捻転を生じることがあり,CTでwhirl signを呈することがあるが,術後に循環障害を伴わず360度以上の捻転を示すことは極めてまれである.closed loopまたはstrangulation(絞扼)の所見があり,whirl signを示せば腸管捻転症の可能性は極めて高い.CT画面に直角に捻転していない症例ではwhirl signは描出されないことがある.
  【参照症例】   1. 下腹部痛シリーズ 3 【症例 LE 14】
2. 腹部全体痛シリーズ5 【症例 GE 23】

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