図1の肝周囲,図10と図11の右結腸傍溝に少量の腹水がある(※).心房細動のある患者が腹痛を訴えたら上腸間膜動脈(SMA:superior mesenteric artery)塞栓がないかをチェックすることは必須である.図2のSMAを尾側へ追跡すると図7から末梢が造影されなくなる.SMA閉塞を意味し,心筋梗塞と心房細動があるのでSMA塞栓症と診断する.図10から尾側の,腹水様に見える二重丸◎は腹水ではなく全く血流のない小腸である.回腸末端(TI),右側結腸(A:上行結腸,C:盲腸)と下行結腸(D)は壁が正常に造影されている.図6で始まる空腸(J1)を頭側へ追跡すると図2でUターンし下行して,図13でまたUターンして上行し,図7の空腸(J27)あたりから壁の造影効果が消失する.図11〜図16の▲と△は一見よく造影される小腸壁に見えるが実は△は腹膜で,▲は腸間膜で,進行性の壊死腸管に接しているために充血肥厚しているのである(症例ER16の解答で腸管壊死のCT所見 8)隣接する腹膜,腸間膜や後腹膜筋膜の充血・肥厚).その根拠は同腸管の後側壁は全く造影されてないことで,造影された様に見える出血性壊死と共に腸管壊死の診断の際のpitfallの一つである.図12からのさらに末梢のSMAが造影されているのは側副路からの血流によるものだが,壊死後に発達した側副路か,壊死を阻止出来ない程の血流量と言うことであろう.心筋梗塞直後のため手術は2日後に行われたが,腸管壊死はさらに進行しviableな残存小腸はTreitz靱帯から25cmのみであった.
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