下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 4 EXPERT COURSE 解答 【症例 LE 18】

S状結腸捻転.sigmoid volvulus








図1の著明に拡張した左側の腸管は結腸と思われるが,coffee-bean signではないのでS状結腸捻転の可能性は低いと判断するのが常識的であるが,CTでS状結腸捻転と診断できる.著明に拡張した左側の結腸を図2の1とAから尾側へ追跡すると,図16の15は前図の図15の16へUターンして,図13のbeak sign(▲)を呈して閉塞する,または図14の直腸(R)に連結する.図2のAは図13のMとなって閉塞するか,または図14の下行結腸(D)と連結する.つまり拡張した結腸が図13と図14の↑の部位でclosed loopとなり,下行結腸と直腸が同部位に収束するのでS状結腸捻転である.Closed loopとなっているS状結腸は上行するS状結腸と下行するS状結腸が,左右ではなく前後に重なっているから腹部単純レントゲンでcoffee-bean signを示さないのである.直腸は虚脱していることが一つの特徴である(捻転直後に便意を感じ排便するのではないか)(下記文献1,2).大腸ファイバーにてガス抜きと捻転解除(detorsion)を行った.













文献考察
1)Catalano O. Computed tomographic appearance of sigmoid volvulus. Abdom Imaging. 1996 Jul-Aug;21(4):314-7.
2)Madiba TE, Thomson SR. The management of sigmoid volvulus. J R Coll Surg Edinb. 2000 Apr;45(2):74-80.
  大腸ファイバーによる整復が禁忌で,手術すべき状態:1)S状結腸壊死,2)腹膜刺激所見,3)肉眼的血便.血便または直腸指診にて血液を認めたら腸管壊死の可能性を示唆する所見であり,大腸ファイバーによる捻転整復(detorsion)は禁忌である.壊死があると穿孔しやすいだけでなく,捻転した壊死腸管を整復すると敗血症性またはendotoxinショックに陥ることがある.捻転により壊死に陥った腸管の腸間膜静脈内には細菌やendotoxinが存在する可能性が高い.捻転により閉塞していた静脈を捻転整復により開通させ,細菌やendotoxinを全身に循環させる結果になるからである.従って大腸ファイバーを予定する前に直腸指診にて血便の有無を確認することは極めて大事な診察所見である.

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