文献考察:胃潰瘍穿孔の保存的治療.
日常診療の指針 胃・十二指腸穿孔に対する保存療法の有用性
Author:大森浩明(岩手医科大学 救急医), 旭博史, 井上義博, 藤野靖久, 入野田崇, 遠藤重厚, 齋藤和好
Source:外科治療(0433-2644)86巻6号 Page1119-1120(2002.06) 要旨: 胃潰瘍穿孔については,保存的治療は一般的な治療法とされていない.当科で1995年4月から胃潰瘍穿孔全例(連続する5例)に対し保存的治療を行ったが,奏功率は40%であり,しかも重症肝硬変を合併した1例(3日後に手術)は死亡した.治療方針は開腹手術,胃切除を基本とし,保存的治療は患者の希望があり,穿孔径が小さく(内視鏡診断),腹水が少なく,穿孔部に食物残査が嵌入し被覆されやすい状況などの特殊例のみに選択している.保存的治療が奏功しない理由として,十二指腸穿孔と比較し,高齢者に好発するため,合併疾患の併存や発症から来院までの時間が長いこと,正酸・低酸例が多く,そのため細菌性腹膜炎の合併が高いこと(十二指腸潰瘍穿孔例では高酸例が多く,内容物が無菌であることが多い),穿孔径が大きく被覆されにくいことなどが考えられる. 私見:ガストログラフィン造影で造影剤の漏出がなく,腹水が少量であれば保存的治療を試みていい.
|