上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ2 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 6】

急性十二指腸粘膜病変.ADML(acute duodenal mucosal lesion)




画像が黒すぎて脂肪とガスの鑑別が出来ないので遊離ガスの有無の読影は不可能である.図5でD1が十二指腸(duodenum)球部でD3〜D9が下行部である.図9のD5〜図14のD10は粘膜下浮腫による壁肥厚を呈している(↑).膵頭部には腫大や周囲の炎症所見や膵実質の不均一性はなく膵炎ではないので,十二指腸下行部に限局した急性炎症性疾患,すなわち急性十二指腸粘膜病変:ADML(acute duodenal mucosal lesion)と診断する.内視鏡検査(図A)で十二指腸球部から下行部にかけて急性十二指腸炎と,凝血塊の付着を伴う多発性の浅い急性潰瘍(A1)を認めた.








参考症例(Plain CT):77歳男性.11時間前に上腹部痛が出現し,5時間前から腹痛が増強したので救急搬送された.体温:36.8℃,心窩部に圧痛がある.




図3の十二指腸球部から図6の下行部にかけて粘膜下浮腫による壁肥厚を示している(↑).翌日の内視鏡検査で十二指腸球部から下行部に発赤,浮腫とビランを認め,ADMLと診断された(図B).




文献考察:ADML(急性十二指腸粘膜病変)
屋嘉比康治,中村孝司.特集:出血性消化器疾患,急性胃十二指腸粘膜病変.日本臨床 56巻9号:128-134,1998.

要旨:AGML(急性胃粘膜病変)と同様な所見が十二指腸球部や下行部に単独に認められる場合,ADML(acute duodenal mucosal lesion:急性十二指腸粘膜病変)と呼び,胃と十二指腸に併存する場合はAGDML(acute gastroduodenal mucosal lesion:急性胃十二指腸粘膜病変)と呼ぶ.しかし,食道や十二指腸の粘膜病変は胃病変の部分症あるいは随伴症状としてAGMLに含まれると捉えることが一般的である.

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