上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ1 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 2】

十二指腸潰瘍穿孔.Perforated duodenal ulcer.






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図1と図2で少量の腹水があり(※),図1〜図6で△はアーチファクトを伴い遊離ガスである.ウィンドウ幅を広げた画像なら脂肪組織とガスの鑑別は容易であるが,この例のように画像のウィンドウ幅(WW)276,ウィンドウレベル(WL)40 だとアーチファクトと辺縁の性状で鑑別するしかない.図6の拡大画像で脂肪組織の輪郭(辺縁)はやや鈍で,ガスの輪郭はくっきりと鋭い所見が認識でき,ガスと接する肝表面にアーチファクトを形成しているのがわかる.胃壁に浮腫性肥厚を認めないので十二指腸を検索する.図9〜図13の▲は十二指腸球部前壁の浮腫性壁肥厚を示しており,図10〜図12の↑が潰瘍性病変と思われ,十二指腸潰瘍穿孔と診断する.腹水が少量で,来院以来腹痛も改善傾向にあったので保存的治療を行い,成功した.5日目の内視鏡検査で十二指腸球部前壁に活動性潰瘍(A1)を認めた.








参考症例(十二指腸潰瘍穿孔):43歳女性.半年前十二指腸潰瘍と言われ3ヶ月間治療したが,症状が消失したため治療を自己中断した.10時間前に心窩部痛が出現し,次第に増強してきたため来院.体温:38.0℃,心窩部に圧痛,反跳痛と筋性防御を認めた.
図2〜図7で遊離ガスが(△),図1,図2と図7で少量の腹水(※)がある.胃小弯側には急性病変を示唆する胃壁の粘膜下浮腫を認めないが,図8〜図10の前庭部前壁の▲は粘膜下浮腫を示している.図7で十二指腸球部が描出されているが,前壁は粘膜下浮腫を示し(▲),↑は欠損像であり急性潰瘍性病変であろう.従って,十二指腸潰瘍穿孔と診断できる.腹水量は少ないから保存的治療が可能と思われる.手術で同所見が確認され(図A:白矢印が十二指腸潰瘍穿孔部),大網充填術を行った.







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