上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ1 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 5】

胃潰瘍穿孔.Perforated gastric ulcer.




図5〜図8の△は遊離ガスで,脾臓背側には腹水があり(※)消化管穿孔を強く示唆する.上腹部痛を訴えているので胃か十二指腸穿孔がないか検索することが大事である.図5から胃小弯側の壁が浮腫性の肥厚を呈し始め(▲),図14の前庭部後壁まで広がる.図8〜図12の↑は浮腫性壁肥厚内の壁欠損像であり,急性潰瘍性病変を意味する.5mmスライスだから胃潰瘍穿孔との診断は容易である.図8と図9の↑のように,胃角部の深い潰瘍底は胃壁からやや離れた部位に認める場合が多い.図Aはガストログラフィンによる造影で,造影剤の大量漏出を認めた(図A:白矢印).手術で胃角部前壁に10円硬貨大の穿孔を認め(図B:↑),胃部分切除を行った.








参考症例(胃潰瘍穿孔):51歳男性.10年前と1年前に胃潰瘍で入院したことがある.1ヶ月前から時々空腹時の心窩部痛とタール便を自覚していた.数時間前,今までと違う激しい心窩部痛が突然出現し,改善しないため来院した.体温:38.0℃,上腹部に圧痛と反跳痛がある.
経鼻胃管からガストログラフィンが投与されている.図1〜図4で遊離ガスを認める(△).図3〜図7で胃小弯側から後壁の粘膜下浮腫による壁肥厚を示し(▲),図4と図5の↑は胃角部の潰瘍性病変であり,図5〜図7の白矢印も潰瘍の可能性が高い.網嚢に遊離ガスや液貯留を認めないので穿孔部位は後壁潰瘍ではなく,胃角部潰瘍であろう.手術で同所見が確認され,胃部分切除が施行された.病理:benign,kissing ulcer (図A:↑と白矢印).










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