文献考察1):盲腸周囲ヘルニア
Dis Colon Rectum. 1986 Nov;29(11):752-4. Paracecal hernia: a cause of intestinal obstruction.
Rivkind AI, Shiloni E, Muggia-Sullam M, Weiss Y, Lax E, Freund HR.
During a two-year period, five patients were treated by us for acute intestinal obstruction caused by an incarcerated paracecal hernia. All patients underwent surgery early, so none required bowel resection. The possibility of an internal hernia as a cause of intestinal obstruction and a profound knowledge of the pericecal anatomy, however, are necessary for successful diagnosis and treatment of paracecal hernias.PMID: 3769694 追記:盲腸周囲ヘルニアの嵌入部位は(図A),1)上回盲窩(superior ileocecal recess),2)下回盲窩(inferior ileocecal recess),3)盲腸後窩(retrocecal recess),4)結腸傍溝(paracolic sulci)の4箇所に分類される.
文献考察2):本邦集計49例(表1),盲腸後窩ヘルニアが67.3%と最も多い.60歳以上が55.1%を占め,CT撮影された13例中11例に術前診断されている. 盲腸窩ヘルニアの2例
Author:大石純(糸島医師会病院 外科), 吉岡晋吾, 牧孝将, 冨田昌良
Source:日本消化器外科学会雑誌(0386-9768)37巻12号 Page1894-1899(2004.12)
Abstract:盲腸窩ヘルニアは後腹膜窩に腹腔内臓器が陥入する内ヘルニアの一つでまれな疾患である.本邦報告は自験例2症例も含めて49例であった.症例1は89歳の女性で,当院内科に心不全加療目的で入院中,小腸イレウスを発症した.保存的加療で改善なく当科転科となった.腹部CTで盲腸窩ヘルニアを最も疑い緊急手術を施行し盲腸後窩ヘルニアと診断した.症例2は59歳の男性で,右下腹部痛で近医受診し小腸捻転症を疑われ当院紹介となった.腹部超音波・腹部CTにて小腸の盲腸後窩に陥入する像を認め,盲腸後窩ヘルニアの術前診断にて緊急手術を施行した.本疾患は特異的な臨床症状はなく術前診断が困難とされてきたが,右下腹部に自発痛や圧痛・腫瘤触知などの異常所見を認める報告が多い.さらに,最近ではCTにより術前診断される報告が増えており,本疾患の理学所見・CT所見・腹部超音波検査を認識しておくことが肝要であると思われた.
文献考察3):本邦集計43例(表2). 盲腸後窩ヘルニアの1例
Author:伊藤浩一(菰野厚生病院), 岩井昭彦, 武田佳秀, 栗本昌明
Source:臨床外科(0386-9857)55巻12号 Page1457-1460(2000.11)
Abstract:症例は48歳女で,右下腹部痛,嘔気,嘔吐を主訴に入院した.入院時の腹部CTでは拡張した腸管しか指摘できなかった.急性虫垂炎を疑って開腹したが異常所見は認めず,術後に入院時の腹部CT像を再検討し盲腸周囲ヘルニアと診断した.術中所見から盲腸後窩ヘルニアと診断し,ヘルニア嚢を切離・開放した.術後経過は良好で,23日目に軽快退院となった. 追記:内ヘルニアは体腔内のpouch(窪み,窩,陥凹)やopening(孔)に臓器が入ることと定義され,腹膜窩ヘルニアと異常裂孔ヘルニアに大別される.盲腸周囲ヘルニアは前者に属し,4つの腹膜陥凹のいずれかに腹腔内臓器が嵌入するものである.4つの腹膜窩は正常では漏斗状であり,ヘルニアを起こしにくい.しかし,窪みが異常に深い場合,あるいはその入り口が適度の「狭さ」である場合に腸管の嵌頓を起こすものと推測されている.腸閉塞における内ヘルニアの頻度は数%未満とされるが,盲腸周囲ヘルニアの内ヘルニアに占める割合は欧米では約13%,本邦では4.2〜6.3%とされ,非常にまれな疾患である
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