右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ20 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 97】

盲腸憩室炎.Cecal diverticulitis.








右側結腸(A:上行結腸,C:盲腸)は図12までで,回腸末端(TI)は図9から始まる.図4〜図12までの右側結腸は粘膜下浮腫による全周性の壁肥厚を示し,図1〜図9では多発性の憩室があり(白矢印),背側に液貯留と後腹膜筋膜の肥厚を呈し(△),憩室炎の所見である.図13の1〜図13の13は最大径1cm大に腫大した虫垂で,周囲脂肪組織の濃度上昇もあり,壁も良好に造影され急性虫垂炎の所見である.どちらが主病変か? 図3〜図8の上行結腸背側の液貯留(△)は虫垂からかなり離れた部位にあり,憩室炎が主病変と診断すべきである.急性虫垂炎の診断で手術となった.虫垂は軽度の腫大と発赤を認めたが,盲腸に固い腫瘤(実は図9〜図11の憩室内の大きな糞石:↑)を触れ,腫瘍性病変の可能性を否定できず回盲部切除を施行した(図A).病理:盲腸憩室炎,虫垂はmild appendicitis.












文献考察:右側憩室炎32例,憩室炎の反復は29.6%にみられた
右側結腸憩室炎症例の検討
  Author:吉光裕(黒部市立黒部市民病院), 安田雅美, 天谷公司, 経田淳, 森和弘, 竹山茂
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)63巻1号 Page19-24(2002.01)
  Abstract:右側結腸憩室炎32例について検討し,平均年齢は42.1歳,男性23例,女性9例であった.初回憩室炎では全例に超音波検査,22例にCT検査が施行され,28例で憩室炎の診断が可能であった.初回憩室炎で緊急手術が施行されたのは3例で,29例は全例保存的に軽快した.初回憩室炎で緊急または待機的に腸管切除が行われたのは5例で,それ以外の27例中8例に憩室炎の反復が見られた.再発予防のための腸管切除は初回・反復時合わせて10例に行われ,2例に術後合併症を認めたが,保存的に軽快し再発は見られなかった.右側結腸憩室炎において超音波検査とCT検査により高い診断率が得られ,不要な緊急手術の回避に有用であった.また,右側憩室炎のほとんどは保存的に軽快するが,反復性憩室炎の頻度は低いとはいえず,経過観察には十分な配慮が必要と考えられた.

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