右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ15 RESIDENT COURSE 解答 【症例 RR 73】

S状結腸癌.Sigmoid cancer.








図5〜図8で上行結腸(A)と下行結腸(D)共に拡張しているので,図9の1から下行結腸を肛門側へ追跡する.図10の25から壁肥厚が始まり(↑),図7と図6で腫瘤となり完全閉塞する.良好に造影される病変だから悪性腫瘍を疑う.そこから肛門側への連続性は確認できないが,口側からの走行から判断するとS状結腸の病変であることは明白であり,S状結腸癌による閉塞と診断する.大腸ファイバー下に経肛門的減圧チューブを挿入し,連日洗浄を行い,2週間後に1期的に根治手術を施行した.病理:well differentiated adenocarcinoma of sigmoid colon.









文献考察:経肛門的減圧
大腸癌イレウスの治療戦略 経肛門的減圧術の予後からみた検討
  Author:久留宮康浩(静岡済生会総合病院 外科), 寺崎正起, 浅羽雄太郎, 新宮優二, 夏目誠治
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)25巻1号 Page13-19(2005.01)
要旨:近年,大腸癌イレウスに対し,経肛門的減圧術を第一選択とする施設が増えてきている。今回,経肛門的減圧術施行例の短期ならびに長期予後につき検討した。過去14年間に当科で経験した大腸癌イレウス症例は131例で,75例に逆行性イレウス管の挿入を試み,59例が減圧に成功した。減圧成功例59例では緊急手術例はなく,すべてに一期的切除吻合術が可能であった。また成功例59例の手術的根治度については,Cur AとBの合計は83.1%で,緊急手術や,経鼻的イレウス管などの経肛門的減圧術以外の方法で行ったものの67.6%より有意に根治度が高かった。 さらに原病死のみの5年生存率を比較すると43.2%,33.9%であった。大腸癌イレウスに対する経肛門的減圧術により,速やかな全身状態の改善と緊急手術の回避が可能であった。また,一期的切除吻合の機会も増え,かつ縫合不全の発症率も減少し,短期的,長期的予後が改善すると思われた。
追記:横行結腸癌10例中7例に,上行結腸3例中2例に成功.
  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ9 【症例 GR 41〜45】

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