上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ18 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 87】

食餌性イレウス(ハルサメ).small bowel obstruction due to food bolus(sticks of bean jelly) impaction




図8〜図14の△は小腸内糞便(small bowel feces)である.図15の1から追跡すると図5の29と頭側へ進展する.他方では図5〜図8の拡張のないまたは虚脱した小腸SBへ連続するものとおもわれ,小腸内糞便(small bowel feces)が閉塞部位である.移行部図5〜図8で腸重積や腫瘍性病変は認めないので,癒着によるものか食餌性イレウスと診断する. 腹痛が強いため手術が施行された.骨盤腔内の回腸で閉塞所見があり,原因は軟らかい腸管内腫瘤があり食物残渣(ハルサメ)と思われ,残渣を用手的に盲腸に誘導し(milking)手術を終了した.








参考症例(食餌性イレウス):64歳男性.既往歴:22年前十二指腸潰瘍の手術.朝から上腹部痛が出現し,昼過ぎには排ガスがなくなり腹痛が増強したので来院した.体温:36.4℃,腹部全体に圧痛があるが反跳痛や筋性防御はない.図3〜図5の↑は小腸内糞便で,図2と図1で虚脱した小腸(SB)があり,他方では図5の1から拡張した腸管となり,数字順に伸展するので閉塞部位であり閉塞の原因である.図2と図1の小腸SBが癒着による屈曲や狭窄がなくて全く正常な腸管であれば食餌性イレウスである.数時間経過観察したが腹痛が増強し,CTの図1で▲は小腸捻転を示すwhirl signの可能性があり手術を施行した.小腸捻転はなく,盲腸から50cmの部位で5×3cm大の柔らかい食物残渣の塊がありそこでのcaliber changeを認めた.盲腸まで運ぼうと試みた(milking)が徐々に塊は破砕され縮小した.術後は順調に経過した.










文献考察1):食餌性イレウス,本邦集計110例(表1)
マンゴーの種による食餌性イレウスの1例
  Author:古波倉史子(浦添総合病院), 新里誠一郎, 長嶺義哲, 伊志嶺朝成, 比嘉宇郎
  Source:手術(0037-4423)56巻6号 Page837-840(2002.06)
  Abstract:81歳女.腹痛と嘔吐が出現しイレウスの診断で入院となった.腹部単純X線検査で小腸の拡張と鏡面形成を認めた.腹部超音波検査で小腸の拡張とkeyboard signを認め,腸管の蠕動は弱かった.胃管挿入により症状は軽快し,第7病日食事を開始したが,再びイレウス症状が出現した.その後第26病日にもイレウス症状が出現し炎症反応を認め,抗生物質投与で軽快した.イレウス管造影検査及びCT検査で回腸末端に拡張腸管とその肛門側の狭窄を認め,第38病日手術を施行した.Bauhin弁から約60cmの回腸が強く屈曲して右腹壁に癒着し,腹壁に穿通していた.又,40cmの回腸には,楕円形の薄くて固い異物が嵌頓していた.穿通部から異物肛門側の狭窄部を含めて約17cmの回腸を切除した.異物はマンゴーの種(65×35×5mm)であった.切除標本の回腸には24×12mm大の潰瘍穿通を認めた.

文献考察2):食餌性イレウス,本邦集計55例(表2)
食餌性イレウスの2例 本邦報告55例の考察
  Author:白井量久(名古屋第一赤十字病院), 服部龍夫, 小林陽一郎, 宮田完志, 深田伸二, 湯浅典博, 久留宮康浩, 江畑智希, 高見澤潤一
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)19巻7号 Page901-904(1999.09)
  Abstract:1)臼歯の欠損のある46歳女.イレウスを保存的に治療されたが軽快せず開腹手術を行った.腸管の癒着,狭窄はなく,回腸末端から60cm口側に固い内容物を触れ,回腸の切開によりワカメの塊が確認された. 2)胃切除の既往のある総義歯の62歳男.イレウスの保存的治療の軽快後にぜんざいを食べ,再びイレウスとなり再入院した.小腸造影にて経時的に移動する馬蹄形の陰影欠損像を認め,餅による食餌性イレウスと診断し開腹手術を行った.腸管の癒着,狭窄はなく,Treitz靱帯より約40cm肛門側に鶏卵大の軟らかい塊状物と小豆状物質を認めた.この塊状物を用手的に細かく砕き上行結腸に送り出し,術後8日目に餅と小豆を便塊中に確認した.

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