右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ13 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 61】

急性虫垂炎・虫垂腺癌.Acute appendicitis with adenocarcinoma.






図2の1〜図11の10は虫垂で,1cm以上に腫大し,図8〜図12では後腹膜筋膜の造影・肥厚を認め,急性虫垂炎である.しかし,全体的に内容物がwater densityより高濃度で,図4〜図8の虫垂周囲と思われる部分(▲)も高濃度を呈しているのは通常の急性虫垂炎とは違う所見である.切除した虫垂の内腔に乳頭状腫瘤を認め(図A:↑),病理検査でadenocarcinomaと報告され,後日結腸右半切除を施行した.病理:adenocarcinoma(moderately differentiated,ly0,v0)








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文献考察:原発性虫垂癌,本邦集計例144例(表1)
長期虫垂炎様症状を呈した虫垂粘液嚢胞腺癌の1例
  Author:高島正樹(日本赤十字社医療センター), 増田亮, 田中勲, 板東隆文, 豊島宏
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)60巻3号 Page767-771(1999.03)
  Abstract:長期に亘って繰り返す虫垂炎様症状の発現を契機に発見された虫垂原発粘液嚢胞腺癌の1例(71歳男)を経験した.自験例では虫垂炎様症状が長期に亘って反復するといった緩徐な臨床経過を示していた.高齢者における虫垂炎疑診例で慢性の経過を示す例では本症も念頭に置く必要があると思われた.
追記:原発性虫垂癌は大腸癌取り扱い規約によると,1)粘液嚢胞腺癌(mucinous cystadenocarcinoma),2)腺癌(adenocarcinoma),3)その他,に分類される.岩崎分類では1)嚢腫型(cystic type):粘液嚢胞腺癌に相当,2)結腸型(colonic type):腺癌に相当,3)混合型,に分類される.144例の集計で嚢腫型は55.6%,結腸型は38.9%,混合型が5.5%であった.

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