右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ11 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 54】

十二指腸憩室穿孔.Perforation of duodenal diverticulum.








図1〜図8の丸数字12は十二指腸である.図7〜図16に連続する液貯留を認める(▲)が,図13と図14で腸間膜の血管(△)が中央に位置しているので,腸間膜内(後腹膜内)の液貯留である.図11で腸管外遊離ガス(↑)を認めるが,腸間膜血管と同部位にあり,液貯留と同様に腸間膜内である.その遊離ガスを頭側へ追っていくと図8で十二指腸と連続するので,十二指腸の後腹膜内穿孔が最も考えやすい.右側結腸が高濃度の肥厚を呈しているので,右側結腸穿孔の診断で手術となった.右側後腹膜に壊死組織と膿汁を認め,右側結腸を切除し端端吻合した.しかし,閉腹直前に胆汁性腸管液の滲出を認め,切除した右側結腸粘膜に病変はないことを確認した後さらに検索すると,十二指腸水平部憩室の穿孔が発見された(図A).閉鎖し空腸漿膜パッチで補強し,術後は順調に経過した.右側結腸の病理:粘膜に病変はなく腹膜炎からの炎症所見のみ.









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文献考察:十二指腸憩室穿孔,本邦集計56例(表1)
十二指腸憩室穿孔の1例
  Author:目黒英二(鹿角組合総合病院), 荒谷宗充, 青木毅一, 入野田崇, 斎藤和好
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)62巻9号 Page2181-2184(2001.09)
  Abstract:67歳男.主訴は心窩部痛.上部消化管内視鏡検査により十二指腸に憩室を認め,又,腹部CTにより腎前部と十二指腸下行脚周囲の後腹膜に気腫を認めた為,十二指腸憩室の後腹膜穿孔(穿通)の診断により開腹術を施行した.十二指腸下行脚及び膵頭部背側に後腹膜膿瘍ならびにその周辺部の蜂窩織炎性変化を認めた.十二指腸壁の炎症所見が強度であり穿孔部の縫合閉鎖は行わず,膿瘍腔drainage及び胃空腸吻合(by-pass)術を施行し,術後経過は良好であった.

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