文献考察1):閉鎖孔ヘルニア
閉鎖孔ヘルニア11例の経験
Author:西島弘二(国立金沢病院 外科), 湊屋剛, 伊藤博, 黒阪慶幸, 竹川茂, 桐山正人, 道場昭太郎, 小島靖彦
Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)24巻4号 Page795-800(2004.05)
Abstract:1995年4月から2003年3月までに骨盤部CT検査にて術前診断が可能であった閉鎖孔ヘルニア11例を対象とし,臨床的検討を行った.11例はいずれも痩せた高齢女性で,嘔吐または腹痛を主訴とするイレウス症状で発症し,開腹手術歴を有する症例は9例(82%)であった.本症に特徴的なHowship-Romberg徴候は4例(36%)にのみ認め,発症から手術までの期間は1〜12日(平均4.3日)であった.全例に開腹手術を施行した結果,嵌頓腸管は回腸10例,空腸1例で,嵌頓形態はRichter型9例,全係蹄型2例であり,6例に腸管壊死を認め,8例に腸管切除を行った.また,ヘルニア門の閉鎖法は腹膜単純閉鎖8例,恥骨骨膜と閉鎖膜の縫合2例,メッシュによる閉鎖1例を行い,他病死1例を除く10例は軽快退院し,無再発である.痩せた高齢女性のイレウス患者では本症の可能性を念頭に置き,早急に骨盤部CT検査を施行し診断することが重要であると考えられた.
文献考察2):本邦集計257例(表1,表2)
閉鎖孔ヘルニア 最近6年間の本邦報告257例の集計検討
Author:河野哲夫(市川大門町立病院 外科), 日向理, 本田勇二
Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)63巻8号 Page1847-1852(2002.08)
Abstract:自験例4例を含めた最近6年間の本邦報告257例について集計し検討した.年齢は56歳から99歳迄で,平均年齢は81.5歳.性別は女性が248例で,高齢女性が圧倒的に多かった.左右別では右側が149例,左側が98例と右側に多く,開腹手術歴を有するものは24.0%と少なかった.Howship-Romberg徴候の陽性率は62.1%で,術前診断率は82.9%であった.腸管切除率については49.8%で,ほぼ半数が腸管切除を必要としており,術後合併症発生率は11.6%,死亡率は3.9%,手術死亡率は3.6%であった.診断には骨盤CTが非常に有用で,そのため,近年本症の術前診断率や予後は向上したが,腸管切除率は依然として高率であった.今後は腸管切除を避けるためになおいっそう早期診断・早期手術を心がけることが重要であると思われた.
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