右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 43】

魚骨による空腸穿孔.Perforation of jejunum by a fish bone.



図5〜図7の↑は魚骨であろう.遊離ガスは認めないが,図7〜図9で少量だが腹水があり(▲),拡張した小腸は麻痺性イレウスの可能性が高く,魚骨による小腸穿孔と診断できる.手術で魚骨による空腸穿孔が確認された(図A:△).左側に異物による穿孔があるのになぜ主訴と圧痛部位が右側なのか不明である.




文献考察:魚骨による消化管穿孔
1)CTスキャンによって術前に診断した魚骨穿通による腹腔腫瘤の1例
  Author:津田基晴(富山医科薬科大学 第1外科), 鈴木衛, 小山信二, 他
  Source:臨床外科(0386-9857)52巻9号 Page1213-1216(1997.09)
1984年から1996年までに,術前に魚骨による消化管穿通または穿孔と診断された症例は27例で,CTスキャンが施行された22例全例で肉芽腫内に針状の石灰化像を認め,腹部エコーが施行された16例中魚骨が確認されたのは11例(69%)であった.

2)術前診断が可能であった魚骨による腹腔内炎症性腫瘤の1例
  Author:竹元伸之(東埼玉総合病院), 山本宏, 甲斐敏弘, 椎名良直, 岡田晋一郎, 関口勝也, 宮田道夫
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)61巻5号 Page1293-1298(2000.05)
  Abstract:69歳女.左下腹部痛を主訴に受診,腹部所見では同部位に径10cm大の圧痛を伴う表面平滑・弾性硬の腹部腫瘤を触知した.入院時白血球数10,900/mm3,CRP2.60mg/dlと炎症所見を認めた.USでは消化管と連続した境界不明瞭なlow echoが描出され,またCTでは石灰化を伴う線状陰影を有する腫瘤像を認めた.問診では確診は得られなかったが検査所見と合わせ,魚骨による腹腔内炎症性腫瘤を最も疑った.下部消化管造影では,横行結腸左側・S状結腸右側の両方に約5cmの壁外性圧排像を認めた.開腹所見で腫瘤は術前の画像診断の如く両結腸に挟まれて存在し,腫瘤を含めた切除を施行した.摘出腫瘤は一部膿を含み,内部に長径2.5cmの魚骨を認めた.
追記:術前に画像診断で魚骨が同定された本邦報告例は31例と少なく,診断方法はCTが88%,腹部エコーが42%,両者で魚骨が描出されたのは30%であった.
  【参照症例】   1. 下腹部痛シリーズ5 【症例 LE 25】

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