右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 42】

PTP( press-through-package )による回腸穿孔.Perforation of ileum by a PTP.



図4と図5の小腸内に存在する高輝度の線状物(↑)は異物と思われ,図6と図7の△は腸管外遊離ガスで,図3〜図5,図8と図9の白矢印も遊離ガスの可能性が高い.拡張した腸管は麻痺性イレウスを示唆する.図5の異物と思われる物には四角い袋状の付着物を認め(▲),PTP(press-through-package)である.従って,PTPによる小腸穿孔と診断する.A:上行結腸,C:盲腸,D:下行結腸,S:S状結腸,R:直腸,TI:回腸末端.手術で回盲部より50cmの部位でPTPと2カ所の穿孔を認めた.放射性腸炎による浮腫と硬化を認め,そのためにPTPが停滞・穿孔を起こしたものと思われた.病理:粘膜下は軽度の繊維化,漿膜は強度の繊維化を認める.


拡大画像を見る





拡大画像を見る

拡大画像を見る
文献考察1):PTPによる消化管穿孔,本邦集計40例(表)
Press through package誤飲による回腸末端部穿孔の1例
  Author:鈴木宏光(土肥病院 外科), 松本英男, 土肥俊之
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)65巻12号 Page3198-3201(2004.12)
  Abstract:PTP(press through package)誤飲による回腸末端部穿孔の1例を経験したので報告する.症例は68歳男性で右下腹部痛を主訴に夜間来院した.体温は37.8度で右下腹部に自発痛,圧痛を認めたが,白血球数8,550/mm3と基準範囲であり,抗生剤による保存的治療を選択した.翌日,白血球数9,520/mm3と軽度上昇し,圧痛も増強,Blumberg徴候陽性となった.腹部CTにて,回盲部後腹膜腔,および腸間膜にfree airを認めたため,緊急手術を施行した.回盲部に大網が癒着していたが,炎症所見は軽度であり回盲部切除術を施行した.回腸口側切除断端よりPTPが摘出され,切除標本において回腸末端部にPTPによると思われる穿孔を認めた.PTP異物症の症例数は年々増加傾向にあり,薬剤包装様式の工夫が必要であると思われた(著者抄録) .

文献考察2):PTPによる消化管穿孔,本邦集計19例(表2)
Press through pack誤飲による回腸穿孔の1例
  Author:吉田清哉(東京慈恵会医科大学 外科), 中里雄一, 守屋祐介, 足利建, 稲垣芳則, 青木照明
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)61巻8号 Page2076-2080(2000.08)
  Abstract:49歳女,脳神経外科に入院中,平成9年12月2日の朝,薬を包装しているpress through pack(PTP)を誤飲した.翌日夜間より腹痛出現,外科転科となった.腹部CT検査で右下腹部に線状のhigh densityを示す異物を認め,本人の訴えなどからPTPと考えられた.腹部所見が増悪し板状硬となり,PTPによる穿孔性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.回腸末端から25cmにPTPを触知し,同部が一部穿孔していた.PTP誤飲の中で小腸穿孔は稀であり,文献上本邦報告例は自験例を含め19例であった.PTP誤飲時にはまず上部消化管内視鏡検査を行い,早期に摘出すべきである.しかし小腸まで到達している場合には,十分な経過観察が必要で,PTPの存在部位の診断にはCT検査が有用である .
  【参照症例】   1. その他(Miscellaneous)シリーズ14 ME70

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】