右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 RESIDENT COURSE 解答 【症例 RR 45】

腸管内針.Ingested needles.

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図1の13日前の腹部単純写真で8本の針が描出されているが,13日間で5本は排泄されたと思われ,図2では3本残存している.3週間経っても3本残っており,腹痛も増強したので開腹した.針1は皮下に,針2は上行結腸内に,針3はS状結腸内に存在しており摘出した.上行結腸内の針は先端部分だけ腸管外に貫通していたが腹膜炎の所見は認めなかった.細い針による穿孔では内容物の漏出がないか,または最小限度で,腹膜炎を起こさないこともあるということである.鋭的異物でも手術を要するものは25%程度であることを裏付けている症例である.










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文献考察:異物による消化管穿孔例,過去10年間の本邦報告例95例中針によるものは1例(表1).
胃,結腸,直腸にみられた消化管異物の1手術例
  Author:木村俊久(福井医科大学 第1外科), 藤島由佳, 石田誠, 片山寛次, 廣瀬和郎, 山口明夫
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)22巻1号 Page133-136(2002.01)
  Abstract:49歳男.精神薄弱と癲癇発作の既往があり,精神不安から衝動的に石2個,ミシン針3本,フォーク1本を飲み込んだ.フォークが肛門に刺さり,出血を認めた.単純X線写真,CTにより,消化管内の異物を認めた.鋭利な針は消化管穿孔のおそれがあること,大きな石は自然排出や内視鏡的摘出困難であることなどから,手術適応と判断し,開腹手術を施行した.胃切開で2個の石を摘出し,結腸内の針は透視下で用手的に結腸壁を貫通させて摘出した.直腸内のフォークは肛門括約筋を弛緩させて用手的に肛門より摘出した.

参考症例(腸管内針):15歳男児.数時間前に縫い針を6本飲み込んだ.腹痛や嘔吐はない.熱はなく,腹部はsoft and flatで圧痛もない.
図1の腹部単純写真で,6本の針を認める(↑).図2〜図4で食道下部に1本,図6〜図14で腹部に5本(2〜6)の針を認めた.4は十二指腸内で,他は小腸内と思われる.遊離ガス,腹水や周囲脂肪組織の濃度上昇はなく,消化管穿孔の所見はない.内視鏡で食道内の1本(図2〜図4の1)を摘出し,他は放置した.3日後の腹部単純写真(図16)で針を認めず,合併症なく排出された.

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