下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 3 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 14】

子宮広間膜異常裂孔ヘルニア.small bowel herniation through a defect of the broad ligament of the uterus



拡張した小腸はgaslessだが,壁の造影効果は良好で,腹水はなく,腸間膜の浮腫もないので絞扼性小腸閉塞を疑うには十分な所見はないが,卵巣の手術の既往があるので念のため骨盤腔内の小腸を追跡してみる.図11の1は図9の13で閉塞し,Aは図8のDで閉塞し,図7にて虚脱した小腸(SB)がある.同部位のa〜図4のoは単純閉塞の腸管と解釈できるのでclosed loopを形成しており,図8での,長さ15cm前後の絞扼性小腸閉塞だが腸管壊死はないと診断する.手術所見:左側子宮広間膜に3cm大の欠損部があり,そこへ長さ20cmの小腸がヘルニアを起こし嵌頓していたが,腸管壊死はなかった.







文献考察子宮広間膜異常裂孔ヘルニア
子宮広間膜異常裂孔ヘルニア(herniation through a defect of the broad ligament of the uterus)は内ヘルニアの4〜5%を占めるにすぎないまれな内ヘルニアで,子宮広間膜の前葉と後葉を貫通するfenestra typeと,前葉または後葉の裂隙を通じて盲嚢を形成するpouch typeの2種類に分けられる.成因は不明である.CT所見は,拡張した小腸が骨盤腔内にあり,直腸およびS状結腸を背側に,子宮を前方に圧排する所見を呈する(1).Retrospectiveだがこの症例はS状結腸(S)が左背側へ圧排され,子宮が拡張した小腸(1,2とA,B)により前方へ圧排されており,子宮近辺でのclosed loopだから典型的な子宮広間膜異常裂孔ヘルニアである.岩佐らの本邦全国集計51例によれば,fenestra typeが48例でpouch typeは3例のみで,左右差はない.半数に嵌頓腸管の切除が行われている(2) .

1)Suzuki M, Takashima T, Funaki H, Uogishi M, Isobe T, Kanno S, Kuwahara M, Ushitani K, Fuchuh K.
Radiologic imaging of herniation of the small bowel through a defect in the broad ligament.
Gastrointest Radiol. 1986;11(1):102-4.

2)岩佐和典, 斉藤貢, 北村秀夫, 三輪晃一
左子宮広間膜異常裂孔ヘルニアの1例
日本消化器外科学会雑誌 33巻8号 Page1544-1548. 2000



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