右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 EXPERT COURSE 解答 【症例 RE 45】

爪楊枝による上行結腸穿孔.Perforation of ascending colon by a toothpick.



遊離ガスは認めない.図3〜図6の腸管▲は壁肥厚を示し,図4図5で背側脂肪組織の濃度上昇を認める(白矢印).図4〜図6の線状の↑は魚骨の石灰化像とは違い低吸収値を呈しているので爪楊枝を疑ってもいい所見であり,爪楊枝による小腸穿孔と診断する.△が右側結腸で,壁肥厚した腸管▲は小腸と思われたが,手術では上行結腸が浮腫性に腫大した部位で,壁を貫通した爪楊枝が発見された(図A).△は移動盲腸の背側に位置する小腸ということになるが,手術記録に記載されていないので不明である.TI:回腸末端.







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文献考察:爪楊枝による消化管穿孔例本邦集計(1)
爪楊枝による回盲部穿孔の1例
  Author:清水謙司(康生会武田病院 外科), 中西章人, 林隆志, 佐藤文平, 辻雅衛
  Source:外科(0016-593X)66巻11号 Page1343-1346(2004.11)
  Abstract:74歳男.右下腹部痛を主訴とした.腹部CT,超音波検査により大腸憩室炎の診断で保存的治療を行っていたが,症状は軽快せず,急性虫垂炎による膿瘍形成の疑いで手術を行った.開腹したところ,盲腸壁に6.5cm長の爪楊枝が盲腸壁の内前壁および外後壁を穿孔しており,爪楊枝を盲腸壁から抜去し,穿孔部を含む盲腸壁を部分切除した.術後は良好に経過し,術後12日目に軽快退院した.術後,再度問診したところ,爪楊枝を誤飲した記憶はないものの,串で揚げた食物を好んで食べる習慣があるとのことであった.また,術後改めて術前腹部CTを見直してみると,盲腸内にうっすらと針状陰影を認めた.急性腹症において確定診断がつかない場合は,異物誤飲の可能性を考慮してCT検査や超音波検査を行うことが重要であると考えられた.
追記:本邦集計16例(表1)

文献考察:爪楊枝による消化管穿孔例本邦集計(2)
爪楊枝誤飲による大腸穿孔の1例
  Author:安藤修久(東濃厚生病院 外科), 只腰雅夫, 水野豊, 安藤秀行, 大池恵広
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)64巻11号 Page2794-2797(2003.11)
  Abstract:59歳女.右下腹部痛を主訴とした.3日前に爪楊枝を誤飲の自覚があった.右下腹部に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,血液検査では軽度の炎症所見を認めるのみであった.単純X線,上部消化管内視鏡,US及びCTで異物を認めず,自然排泄を期待し保存療法を行った.しかし,入院6日目に再施行したUSで爪楊枝と思われる線状の高エコー像を認め,CT上でも爪楊枝様陰影を認めた.緊急手術で上行結腸から穿孔する爪楊枝を確認し,抜去した
追記:本邦集計15例(表2)

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