下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 3 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 11】

絞扼性小腸閉塞(壊死なし).strangulated obstruction with no necrosis








図1の肝周囲と図15の骨盤腔内に少量の腹水がある(※).開腹手術(腎摘)の既往があり,短いloopの小腸拡張で,gaslessだから絞扼性小腸閉塞を疑いclosed loopかどうか追跡してみる.図13の1は図3でUターンし,図8の16で閉塞する.Aは図9のEで閉塞し,図8に虚脱した小腸(SB)があり,図8のaから単純閉塞の小腸が始まり頭側へ展開すると思われ,1〜16とAからEの拡張した小腸はclosed loopを形成している.腹水は少量で,壁の造影は良好で,壊死に陥っていない絞扼性小腸閉塞と診断する.イレウスチューブを挿入し経過観察したが腹痛の改善はなく,2日後に手術となった.Treitz靱帯より100cmの部位で約25cmの空腸がバンドにより絞扼され虚血状態であったが,バンド切離によりviableとなり腸管切除は要せず.2日経っても腸管壊死とならなかった幸運な症例ではあるが,CTで正確に診断し即刻手術すべきである.







腸管壊死のCT所見は(上腹部痛シリーズ Residentコース ER16の解答より) ,1)造影CTにて壁が造影されないまたは造影が弱い,2)単純CTにて壁が高濃度(出血性壊死),3)遊離ガス,4)SMVまたは門脈内ガス,5)壁内気腫(intramural gas),6)壁肥厚,7)大量の腹水,8)隣接する腹膜,腸間膜や後腹膜筋膜の充血・肥厚である.1),2)と5)が特異性が高い.
(上腹部痛シリーズ Residentコース ER20の解答より):絞扼性(複雑性)小腸閉塞とは腸管の血流障害を伴う腸閉塞であり,放置すれば急速に腸管壊死に陥り重篤な状態となる.絞扼性小腸閉塞のCT所見は,1)腸管壊死の所見,2)閉鎖ループclosed loop(腸管のloopが隣接する2点で締め付けられている状態で,近くに虚脱した2つの小腸,または虚脱した1つの小腸と単純閉塞の小腸の始点がある),3)腹水,4)腸間膜の浮腫,5)腸間膜血管の走行異常と静脈の怒脹,6)壁肥厚,7)gasless(腸管内にガスがないかあっても少量)の7所見である.1)と2)が特異性が高いが,3)〜7)のうち3つ以上の所見があれば絞扼性小腸閉塞の可能性はかなり高い.

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