右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 RR 21】

腹直筋鞘血腫.Rectus sheath hematoma.




全図で△は,経静脈的造影なしの単純(Plain)CTで高濃度を呈し,血腫である.すなわち,腹壁の腹直筋血腫(腹直筋鞘血腫:Rectus sheath hematoma)である.








拡大画像を見る

拡大画像を見る
文献考察:腹直筋血腫.82例の集計
非外傷性腹直筋血腫の1例
  Author:仲至永(大阪労災病院 外科), 江本節, 藤川正博, 藤井眞, 生島裕文, 吉川澄
  Source:外科(0016-593X)65巻3号 Page337-339(2003.03)
  Abstract:47歳女.右下腹部痛を主訴とした.糖尿病,高血圧症の既往があった.腹部CT及び超音波にて右下腹部に腫瘤を認め,手術を施行した.臍部より3cm尾側から恥骨上縁にかけて5.0×2.0cmの暗赤色,弾性軟な腫瘍を認めた.腹痛の原因は腹直筋血腫によるものと判断し,腹直筋鞘内にPenroseドレーンを留置した.術後縫合糸膿瘍を認め,掻爬術を施行した.術後経過はおおむね良好で,退院となった.自験例は腹筋運動が直接の原因であるが,糖尿病による動脈壁の脆弱化や高血圧症も発症の誘因であったと推測された.非外傷性腹直筋血腫は比較的稀な疾患であり,急性腹症の鑑別疾患として本症を念頭に置くことが重要であると考えられた.
追記:腹直筋血腫は急激な腹直筋の収縮による腹壁動脈の破綻によって筋鞘内に血腫を形成する疾患である.ほとんどの症例で何らかの基礎疾患を有しており,そこに何らかの誘因が加わることにより発症するものと考えられている.急激な腹痛として発症し,症状が強く腹膜刺激症状を伴うことが多いため急性腹症と診断され開腹術に至ることも多い.治療方法としてはほとんどが安静,氷冷,抗凝固療法の中止などにより良好な成績が得られる.本邦82例の集計で,平均年齢は55.7歳,男女比は1:2で中高年の女性に多い.部位は右下45%,左下25%,右上20%,左上10%.
  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ23 【症例 ER 111】

 【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】