文献考察:内腸骨動脈瘤,53例の集計 孤立性内腸骨動脈瘤に対して瘤縫縮術を施行した2例 本邦報告例の検討を含めて
Author:高橋宏明(兵庫県立こども病院 心臓胸部外科), 杉本貴樹, 三村剛史, 北出貴嗣, 西川宏信
Source:日本血管外科学会雑誌(0918-6778)12巻7号 Page663-667(2003.12)
Abstract:症例1:66歳男.無症候性血尿を認め,腹部造影CT,血管造影より孤立性右内腸骨動脈瘤と診断し手術を行った.瘤を可及的に剥離・脱転し,瘤より起始する末梢枝を瘤外より3本結紮した.瘤化した内腸骨動脈起始部を含めて,総腸骨〜外腸骨動脈を切除し,端々吻合した.剥離した瘤壁は切除し,残存壁は可及的に縫縮した.症例2:78歳男.突然の腹痛,腰背部痛から一過性の意識消失を来たした.腹部CT,血液検査所見より急性に発症した腹腔内出血と診断し,試験開腹を行った.内腸骨動脈周囲には炎症性癒着が認められ,その周りには血腫が認められた.術中所見より内腸骨動脈瘤からの出血と判断した.内腸骨動脈起始部をクランプし,瘤を切開したところ,破裂孔が認められ,この周囲は腹膜と癒着し,破裂孔は腹腔内に通じていた.内腸骨動脈起始部を閉鎖し,瘤よりの分枝を瘤内より閉鎖し瘤壁を縫縮した.2例共に病理所見では瘤壁には動脈硬化性変化が認められた.いずれも術後経過は良好である. 追記:孤立性腸骨動脈瘤はまれで,腹部大動脈瘤の2〜6%前後で,さらに孤立性内腸骨動脈瘤は全孤立性腸骨動脈瘤の10〜20%を占めるのみである.1970年以降の53例の集計で,年齢は21〜89歳(平均:68.4歳,21歳はベーチェット病が原因),女性は5例のみで圧倒的に男性に多い.53%が破裂または切迫破裂例である.発生部位は両側性が9例,右側が30例,左側は8例と右側に多い.症状は泌尿器症状(排尿障害・水腎症)が11例,消化器症状(圧迫による通過障害・イレウス)が7例,静脈血栓症併発による下肢浮腫が3例,腸管への動脈瘤穿通による下血が6例にみられた.25mm以上の瘤は早期に手術を行うことが肝要である.
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