下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 2 EXPERT COURSE 解答 【症例 LE 8】

S状結腸宿便性穿孔.stercoral perforation of sigmoid colon



直腸とS状結腸の追跡はやや困難だが,図8の直腸1から頭側へ,図1の下行結腸12から肛門側へ追えば,図5の5と図4の6が連結することがわかる.さらに周囲の小腸も追跡すると図4のABはAとBが頭側へ進展し,図5のCDはCとDとなり同様に頭側へ向かう.すると図4〜図7の骨盤腔内の△は腸管外の糞便と断定できる.図1〜図6の▲は腸管外の遊離ガス(extraluminal gas)である.穿孔部位は虚脱した図5の5と,糞便を含む図4の6の間,すなわちS状結腸穿孔である(図A:↑).病理:穿孔部の辺縁には潰瘍形成が認められ,stercoral ulcerに伴う穿孔が考えられる.






宿便性穿孔stercoraceous(stercoral)perforation特発性穿孔idiopathic(spontaneous)perforation. 前者は、硬便(糞塊)stercoroma、糞石fecaroma、兎糞scybalaによる腸管壁の圧迫壊死から潰瘍を生じ、それが穿孔を起こしたもの、後者は外傷、悪性腫瘍、憩室などの明らかな原因のない大腸の穿孔をいうが、腸管内に硬便がない条件が付く(1)。手術時に前者は大量の硬便があり、穿孔部に壊死組織と炎症があり、穿孔部は円形または楕円形で、最も血流の悪い腸間膜付着部の反対側に起こる。後者は原因となる疾患や硬便がなく、穿孔部の腸管壁にほとんど炎症所見がなく、腸管軸に沿った縦走の裂け目状の穿孔で、腸間膜付着部の反対側とは限らない。両者ともS状結腸と直腸に多く、鑑別は容易ではないこともある。
1)Berardi RS, Lee SS, Chen HP, Stines GJ.
Stercoraceous and spontaneous perforations of the colon.
Int Surg. 1987 Oct-Dec;72(4):235-40.

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