文献考察:骨盤骨折
【腹部救急疾患におけるIVR】 重症骨盤骨折に対するIVR(解説/特集)
Author:田島廣之(日本医科大学 放射線医学教室), 隈崎達夫, 川俣博志, 村田智
Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)23巻4号 Page621-627(2003.05) 要旨:重症骨盤骨折(日本外傷学会骨盤損傷分類IIおよびIII型)は,交通事故や高所からの転落などの強大な外力により生じ,大量後腹膜出血をきたすため予後不良である.出血源は主として内腸骨動脈損傷である.手術的止血法は確立されていない.内腸骨動脈本幹の結紮術は,豊富な側副血行を介して容易に末梢における再出血をきたす.また,巨大な後腹膜血腫のなかから損傷血管を見つけ出しすべてを修復することは極めて困難である.さらに,不確実な手術操作により後腹膜血腫を除去することは,逆に血腫によるタンポナーゼ効果を失わせる.内腸骨動脈に対する経カテーテル的動脈塞栓術は,出血点を観察した上で直接的な止血が可能で,側副血行を介する出血を抑制できることからも,最も優れた止血法として評価されている.単純写真で骨盤輪の破壊を伴う骨盤骨折があり,高度の出血性ショックに陥り,大量急速輸液・輸血によっても循環動態の改善が得られない場合は血管造影の適応となる.造影CTで出血点が確認されれば,これも血管造影の適応である.
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