外傷(Trauma)シリーズ9 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 45】

左腎損傷 IVb(H3)・腰動脈断裂.AAST left kidney grade IV,bleeding from transected lumbar artery.








左腎に粉砕型の損傷があり(↑),周囲に大量の血腫を認め,図7〜図15の△はextravasationである.血腫はGerota筋膜を超え,さらに反対側の腎門部まで広がっている.図9,図8と図7で左腎動脈を確認でき,腎動脈からの大出血と診断する.図1〜図4の造影されている左腎は右腎と比較して造影効果が減弱しており,さらに図4〜図7の白矢印は腎盂の脂肪組織と思われ,その周囲の腎下極は全く造影効果を受けず,腎動脈下極分枝の断裂を意味する.図5でIVCは虚脱しており重度のhypovolemiaである.腎組織の50%以上の腎壊死と腎動脈からの大量出血と診断され手術を考慮すべきである.
















Delayed phaseの図21〜図30の△は連続するので腎動脈からの出血だが,図29〜図36のextravasation(▲)は△とは連続せず別の血管からの出血を強く示唆する所見である.Extravasationのスライス数を考慮するとかなりの高速の大量出血であり手術の適応と思われる.図Aと図Bの血管造影で下極でのextravasation (↑)を認め塞栓術を施行した(図C〜図E).しかし,出血による貧血は進行し(手術の適応),翌日1回ショックになり(手術の適応),2日後に心停止に陥り不幸な転帰となった.Autopsyで後腹膜に陳旧性の血腫と新鮮な血腫を大量に認め,腎動脈からの再出血と診断された.Retrospectiveに見れば血管造影(図Aと図B)で△は腰動脈からのextravasationと思われ,塞栓後の造影(図C〜図E)でも▲はextravasationであり,出血が続いた原因と思われる.外傷性の出血例では出血部位が複数ないかCTを慎重に読影する必要があり,血管造影でも出血部位が複数ある可能性を念頭におき施行,読影すべきである.














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