文献考察:膀胱損傷
[外科医に必要な重度外傷の初期治療] 外傷の初期治療の実際 腎・尿路系損傷(解説/特集)
Author:吉田哲(中国労災病院), 松原由紀
Source:外科治療(0433-2644)86巻4号 Page425-430(2002.04)
膀胱損傷の大半は,恥骨骨折端による損傷であるが,膀胱充満時に下腹部に外力が加わると膀胱頂部が破裂して腹腔内に尿が漏出することもある.4タイプに分類される.1)膀胱挫傷.膀胱壁の挫傷で,血尿は出現するものの壁の連続性は保たれている.2)腹膜外破裂(extraperitoneal rupture).骨盤腹膜の連続性が保たれ,尿が膀胱周囲の後腹膜腔に貯留する場合で,膀胱破裂の約6割を占める.3)腹腔内破裂(intraperitoneal rupture).約3割を占める.膀胱頂部を被う腹膜の破綻を伴い尿が腹腔内に漏出すると高浸透圧尿による腹膜炎が引き起こされる.4)内外同時破裂.膀胱内外破裂の合併で,約1割を占める.
診断には逆行性膀胱造影が有用である.2〜3倍に希釈した水溶性造影剤150〜300mlを透視下にゆっくり注入し,正面および斜位像を撮影し,造影剤排泄後の膀胱像も評価する.
腹腔内破裂は手術の適応である.腹腔外破裂は10日間前後バルーンカテーテル を留置して保存的に治癒しうる.尿溢流に感染を合併した場合はドレナージの適応となる.
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