外傷(Trauma)シリーズ9 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 43】

腎動脈閉塞 IVa.AAST right kidney grade V.









図1〜図3で肝損傷(▲)があるが,周囲に腹水,血腫やextravasationを認めない.右腎が全く造影されていない,すなわち腎梗塞であり,腎動脈閉塞を意味する.図6の造影されている左腎動静脈と比較して,図5と図6の中枢側の右腎動脈は造影されるが図7で造影が減弱し,図8の腎静脈も造影効果が減弱している.明らかな腎損傷や周囲に血腫を認めない.交通外傷や転落などで急に減速すると腎臓はある程度揺り動き血管は引っ張られる.弾力性(伸展性)に劣る内膜に裂創が生じ,それを血流で解離させ血栓症を起こすIVa型である.血管造影で右腎動脈の内膜解離と狭窄を認め(図A:↑),ステントを挿入した(図B:△).図C〜図Gは1週間後の造影CTで,右腎は良好に造影されて機能している.







文献考察:造影CTの撮影法,腎動脈血栓症の治療方針
Radiographics. 2001 Oct;21 Spec No:S201-14.
Ct findings in blunt renal trauma.
Harris AC, Zwirewich CV, Lyburn ID, Torreggiani WC, Marchinkow LO.

Computed tomography (CT) can provide essential anatomic and physiologic information required to determine management of intraabdominal and retroperitoneal injuries sustained during blunt abdominal trauma. It can help in evaluation of the type and severity of parenchymal injury, the extent of perirenal hemorrhage and parenchymal devascularization, and the presence of urinary extravasation. CT can help confirm the presence of major injuries to the vascular pedicle and depict occult renal pathologic conditions. Principal indications for the use of CT in the evaluation of blunt renal trauma include (a) the presence of gross hematuria, (b) microscopic hematuria associated with shock (systolic blood pressure  追記:腎損傷の画像診断には造影CTが第一選択である.100−150mlの造影剤を2−4ml/sec.で経静脈的に注入し,注入開始後60-70秒後に撮影する.深在性損傷と大量の腎周囲血腫を認めたら注入開始後3-5分で尿排泄期のCTを再撮影する.CTで活動性の出血を認めるとき,保存的に治療し後出血を認めた場合は血管造影の適応である.
 手術の絶対適応は生命を脅かす大量出血.相対的手術適応は,a)腎実質が50%以上に血流障害を起こしている,b)ステントや腎瘻などでコントロールできない尿漏,c)内膜解離による腎動脈血栓症.腎動脈血栓症は有意義な腎機能を残すには4時間以内に血行再建すべきである.それでも成功率は14-29%と予後はよくない.腎虚血が4時間以上経過していて,対側腎が正常なら虚血腎は放置して自然萎縮させる治療法を勧める泌尿器科医は多い.

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】