外傷(Trauma)シリーズ8 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 40】

活動性出血を伴う膵損傷IIIa,AAST pancreas grade III with active hemorrhage.






図3〜図5の△はextravasationであり,活動性の動脈性出血を意味する.膵臓は図4と図5で↑間で断裂しており,間隙が2cm以上あるのでERPを施行せず手術していいと思うが,5mmスライスCTであればもっと強い確信を持って決断できる(膵損傷のmanagementをTR16の解答欄から下に再掲).10分後の単純CT図7〜図9でも▲が膵断裂部の血腫で,↑間が2cm以上の断裂部を示している.T:膵尾部,B:体部,H:頭部,Du:十二指腸.図AがERPで,↑が主膵管の断裂部,△は膵外に漏出した造影剤.手術で膵体部完全断裂と断裂部からの動脈性出血を認め(図B:▲が断裂部の血腫),止血と脾臓合併膵体尾部切除が行われた.





膵外傷のmanagement
I.膵損傷のCT診断(ヘリカル以前のCTを含む)のsensitivityは70%前後しかなく何らかの工夫が必要.II.治療が受傷後24時間以上遅れると死亡率と合併症が高い.III.ERPが膵管損傷の診断のgold standardである,IV.主膵管損傷例は手術の適応.
 従ってCTを中心としたmanagementは,1:膵臓は3〜5mmスライス造影CTを撮る,2:脾臓,肝,腸間膜損傷で前述したが,double phase造影CTで所見の検出率が向上する可能性がある,3:3〜5mmスライス造影CTで完全断裂はERPは不要で手術の適応,4:部分断裂で膵臓の厚さの50%以上の深い裂傷は時間と患者の状態が許せばERP,さもなくば手術,5:50%以下の裂創はERPを施行することが望ましいが,できない施設では厳重な経過観察,6:明白な断裂を認めず,二次所見(下記)だけの症例は,数時間〜12時間後にCTを再検査する.

Radiographics. 2004 Sep-Oct;24(5):1381-95.
Blunt trauma of the pancreas and biliary tract: a multimodality imaging approach to diagnosis.
Gupta A, Stuhlfaut JW, Fleming KW, Lucey BC, Soto JA.
要旨:膵損傷の頻度は鈍的腹部外傷例の2%以下,部位は2/3は体部に,残り1/3は尾部と頭部に発生する.死亡と合併症の原因は主膵管損傷によるものがほとんどである.頭部損傷の死亡率は他部位の2倍である.CT所見.I.直接所見:膵腫大,断裂像(線状の無吸収域),粉砕像,不均一な造影効果,II.二次的所見:周囲脂肪組織の濃度上昇またはstranding(スジ状の濃度上昇),周囲の液貯留,脾静脈と膵間の液貯留,出血,前腎傍筋膜の肥厚,周囲臓器の損傷.診断率向上には5mmスライス造影CTが必要である.

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