外傷(Trauma)シリーズ8 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 37】

脾損傷IIIc・仮性動脈瘤自然閉塞.AAST spleen grade III,spontaneous thrombosis of splenic pseudoaneurysm.




図1〜図4で脾臓上極に複雑性の損傷(▲)があるが,周囲の腹水(↑)量は僅かでextravasationも認めないので保存的に治療された.




Hbは12.4g/dlから10.7g/dlまで低下したが輸血なしで順調に経過した.2週間目の上段のCT図10と図11の△は仮性動脈瘤である.腹部エコーで定期的にfollow-upし増大するならTAEを施行する方針で退院した.下段の図13〜図16は4週間目のCT,仮性動脈瘤は血栓化し自然閉塞した(図14と図15:▲).




文献考察:脾仮性動脈瘤の自然閉塞
Dror S, Dani BZ, Ur M, Yoram K..
Spontaneous thrombosis of a splenic pseudoaneurysm after blunt abdominal trauma.
J Trauma. 2002 Aug;53(2):383-5. PMID: 12169954
要旨:49歳男性,交通事故による脾臓損傷(grade II)を保存的に治療したが,7日目の造影CTで2個の仮性動脈瘤を認めた.TAEを試みたがカテを選択的に進めることができず,また造影剤に対する反応(振戦と低血圧)が出現したので中止した.カラードプラーで追跡したら,1個は11日目に,2個目は28日目に自然閉塞したことが確認された.
 画像診断の進歩にともない外傷後の脾仮性動脈瘤の報告が多くなり,遅発性破裂の原因として注目されてきている.TAEは安全で,効果的で成功率が高い.仮性動脈瘤を放置したらどうなるかというnatural courseがはっきりしていない現在,TAEの適応である.follow-upにはカラードプラー検査が有用である.

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