外傷(Trauma)シリーズ6 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 27】

小腸間膜裂創・出血.bleeding from laceration of small bowel mesentery






大量の腹水があるが,図13でdensityが計測されており,CT値が37HUと高いことから血液(>30)であり,大量の腹腔内出血と診断する.出血量は図2の肝周囲で200,脾臓周囲に200,図5の右傍結腸溝で400,左傍結腸溝に150,図8の小腸間に200,図12の骨盤腔内に300で,合計1450mlとなる.図3でIVCが平坦になっており重度のhypovolemiaを意味する.出血部位は,図6〜図8の▲はdensityが高く血腫と思われ,図5〜図10の△はextravasationであり小腸間膜からの活動性出血を示している.手術で活動性出血を伴う2ヶ所の腸間膜裂創を認め,止血・小腸切除を行った.手術後全出血量は2500mlであった.患者の状態が出血多量で不安定な場合はFAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)で診断し,CT検査なしで手術できる体制をとってほしいものである.







参考症例(腸間膜出血):アルコール依存症の39歳男性.腹痛で目が覚め他院に救急搬送されたが,血圧が低下してきたので転送された.前夜に飲酒後転倒して腹部を打撲した可能性を否定できないとのこと.血圧は80mmHg台,脈拍:120/分,急速輸液で血圧が上昇したのでCT検査を行った.






SMAとSMVの背側の腸間膜内に大量の血腫(▲)とextravasation(△)を認め,腸間膜出血を示している.図1のIVCは虚脱して扁平となっており,重度の循環血液量不足状態である.手術で腸間膜裂創を認め,SMAの上部空腸枝からの活動性出血(図A:↑.腸間膜内血腫)を認め止血したが,空腸の虚血所見はなかった.






文献考察:FAST
Trauma Ultrasonography: The FAST and Beyond.
Alexander Ng FRACS
1)http://www.trauma.org/index.php/main/article/214/
2)http://www.trauma.org/archive/radiology/FASTruq.html

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