外傷(Trauma)シリーズ5 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 24】

十二指腸損傷 IIb(D3,rp).AAST duodenum grade III






図3〜図7でMorison窩に腹水(※)がある.図3と図4の白矢印は膵体部と脾静脈間の液貯留で,膵外傷の所見の1つとして言われており膵外傷の可能性を念頭に置く必要がある.図7〜図9の液貯留(▲)は遊離ガスを含み,不均一で,腸管内容物と解釈する.図9と図10の↑間は十二指腸水平部前壁の欠損部(wall discontinuity)を示していると思われ,そこでの穿孔と診断する.図3〜図13の△は腸間膜損傷を示すextravasationの所見だが,より確信を持って診断するにはdouble phase造影CTがほしいところである.腸液で拡張した小腸は麻痺性イレウスを示し,図3のIVCは虚脱して平坦となっており,出血による重度のhypovolemiaを意味する.T:膵尾部,B:膵体部,H:膵頭部,Du:十二指腸.手術で上腸間膜動脈分枝からの動脈性出血と十二指腸水平部のほぼ完全断裂(離断)に近い破裂を認め(図A:↑),止血し,単純閉鎖・空腸パッチを行った.膵頭部は血腫を形成していたので十二指腸乳頭部から術中膵管造影を行ったが膵管損傷は認めなかった.









文献考察:腹部外傷例におけるヘリカルCTの撮影法:double phase造影CT,5mmスライス以下で
グラフ 救急領域のCT画像 消化管損傷(図説)
  Author:鵜飼勲(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター), 井上貴昭, 杉本壽
  Source:外科治療(0433-2644)88巻6号 Page1074-1086(2003.06)
追記:CTの撮影方法.ヘリカルCTで出血を想定して精査する場合は単純CT,動脈相,門脈相を撮影するincremental dynamic CTを優先し,穿孔を想定して撮影する場合は造影剤の投与速度を遅くして,病変部位周囲のthin slice(5mm以下)を優先する.具体的には3ml/secで100ml(体重の2倍弱を目安)の造影剤を注入し,注入開始後25秒(動脈相),80秒(門脈・実質相)に,5mm以下の薄いスライス幅で撮影する.MDCTによる撮影法は文献をお読みください.

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