外傷(Trauma)シリーズ5 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 23】

十二指腸損傷 IIa(D2,rp).AAST duodenum grade II





図3と図4の▲が幽門輪で,十二指腸は図3の1〜図9の8へと展開し,図6の5あたりから壁肥厚を呈している.図4〜図7で胃背側の↑は網嚢腔内の腸管外遊離ガスである.図3〜図6で十二指腸周囲に液貯留または脂肪組織の濃度上昇(△)を認め,十二指腸損傷と診断する.図Aと図Bは3時間後のCTで,大量の腹腔内遊離ガス(↑),Morison窩に腹水(△),網嚢腔にガス(白矢印)を認め手術となった.十二指腸下行脚に約1cm大の穿孔を認め単純閉鎖した.





文献考察:十二指腸損傷の早期診断にはCT検査を経時的に繰り返し行うことが大事
鈍的外傷による十二指腸損傷の3例
  Author:和久利彦(セントラル病院 外科), 渡辺和彦, 冨岡憲明, 高木英幸
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)65巻2号 Page395-399(2004.02)
  Abstract:8歳女.転倒し腹部を打撲した.再検の腹部CTで,腹腔内遊離ガス像,腹腔内液体貯留像,十二指腸の壁肥厚像を認め,受診後11時間で緊急手術を施行した.球部から下行脚にかけて5.5cmの破裂を認め,高度狭窄のため胃空腸吻合を追加した.症例2:53歳女.ハンドルで腹部打撲した.再検の腹部CTで後腹膜腔内ガス像を認め,更に十二指腸造影で造影剤の漏出を認めたため受傷後10時間で緊急手術を施行した.下行脚から水平脚への移行部の完全離断を認め,十二指腸端々吻合を行った.症例3:17歳男.野球の練習中に腹部を強打し,腹部CTで腹腔内遊離ガス像を認め,受傷後3時間で緊急手術を施行した.球部前壁に2cmの破裂を認め,単純縫合閉鎖した.いずれの症例も術後経過は良好であった.早期診断には腹部CTを経時的に繰り返し行うことが大切である.また受傷後24時間以内で膵損傷がないII型症例は,単純縫合閉鎖及び経鼻胃管チューブによる減圧,十二指腸-十二指腸端々吻合及び経鼻胃管チューブによる減圧で十分と考えられた.

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