実はこの症例は下腹部痛シリーズ Residentコース LR5と同一症例で,LR5のガストログラフィン造影CTの2時間前の経静脈的造影CTである.この症例では直腸からS状結腸へ,下行結腸からS状結腸への追跡は不可能である.図4〜図14の△の糞便とガスは明白な腸管壁を認めず腸管外の可能性が極めて高いが,直腸とS状結腸の走行が不明だと開腹手術を決断するほどの自信を持って断定できない.単純CT,ガスが充満した大腸,脂肪組織の少ない症例など,直腸とS状結腸を正確に追跡できない症例は少なくない.十分な自信で直腸・S状結腸穿孔と診断できないときは,LR5症例のようにガストログラフィンを注腸してCT検査することを推奨する.初回CTで液状便が多量にあれば造影剤が希釈されるので10〜20%(400mLの生食にガストロ100mLで20%)程度に,液状便がなければ2〜5%(475mLの生食に25mlのガストロで約5%)に希釈して注入する.ガストロは2%でもCTでは真っ白く表現される.原液は50%糖と同等な浸透圧だから,大量に投与するのは危険.1〜1.5mの高さから500mlを全開で点滴注入する(手で圧をかけて注入してはいけない.穿孔していない憩室やseal offされた穿孔を再穿孔させる危険がある).全量注入後または滴下が止まった時点でCT検査を開始する.この症例は2時間後ガストログラフィン注腸CTを行い早期診断・早期治療(手術)を可能にし,3週間で合併症なく治癒退院した.
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