外傷(Trauma)シリーズ5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 24】

十二指腸損傷 IIb(D1).AAST duodenum grade III



図1〜図9で大量の遊離ガスがある(↑,G).図3〜図6のガス像△は十二指腸(Du)の内側に,胃背側に位置し,上下で盲端になり腸管としての連続性を認めないので網嚢内の遊離ガスである.図5〜図8では十二指腸周囲に液貯留と脂肪組織の濃度上昇(▲)を認め,十二指腸の腹腔内と後腹膜腔への穿孔を強く示唆する.H:膵頭部.手術で十二指腸球部の破裂(約4/5周)を認め,十二指腸を切断し肛門側を閉鎖,口側を空腸に吻合した.






文献考察:1)十二指腸損傷
CTにて早期診断が可能であった外傷性十二指腸後腹膜破裂の1例
  Author:吉川武志(三豊総合病院), 末光一三, 豊岡伸一, 羽藤慎二, 梅里和哉, 加地充昌, 白川和豊
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)18巻7号 Page1055-1058(1998.10)
追記:頻度は腹部外傷の4%前後.十二指腸穿孔(腹腔内,後腹膜腔内)と壁内血腫とに分けられる.腹腔内穿孔は腸管内容物が腹腔内に漏出するので受傷直後より腹膜刺激症状が明瞭であり,遊離ガス像も高率に証明されることから診断は比較的容易である.後腹膜穿孔では受傷直後は腸管内容物が後腹膜腔に限局しているため腹膜刺激症状が弱く,初期の症状や検査値には診断根拠となるような所見に乏しいことが多い.

文献考察:2)3B
Carrillo EH, Richardson JD, Miller FB.
Evolution in the management of duodenal injuries.
J Trauma. 1996 Jun;40(6):1037-45; discussion 1045-6. Review.
PMID: 8656463
追記:手術中に十二指腸およびTreitz靱帯周辺にbile,blood,bubbles(ガスバブル)を発見したら十二指腸穿孔を疑い十二指腸を十分に授動して検索すべき.

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