外傷(Trauma)シリーズ5 RESIDENT COURSE 解答 【症例 TR 22】

十二指腸損傷 IIa(D2,rp).AAST duodenum grade II






肝周囲や腹壁直下には遊離ガスはなく,腹水やextravasationを示す所見もない.図3〜図14のガス像(△)は膵頭部(H)の背側に位置し後腹膜内の遊離ガスであり,十二指腸(Du)の後腹膜穿孔と診断する.手術で十二指腸水平部近くの下行部で2ヶ所の穿孔を認め,1つの穿孔部にして空腸と吻合した.









文献考察:十二指腸損傷
Jurkovich GJ,Bulger EM.34.Duodenum and Pancreas,In.Trauma.4th ed.709-734.2004 Appleton & Lange,Connecticut,USA
要旨:十二指腸には1日に2500mlの胃液,1000mlの胆汁,1000mlの膵液,800mlの唾液の計5l以上の消化液が流入する.消化酵素を大量に含有するから縫合不全が起こりやすいと言われ,一度縫合不全を起こすと大量の消化液の流出のため治療は困難を極める.十二指腸損傷の約80%は単純閉鎖で十分な”mild injury”で,20%は”severe injury”で種々の複雑な手術法を要する.mild injuryとは,刺創,大きさは壁全周の75%以下で,部位がD3(水平部)とD4(上行部),受傷後手術までの時間が24時間以内,総胆管の損傷を合併していないもので,死亡率は6%.severe injuryとは,鈍的または銃創による十二指腸穿孔で,大きさが壁全周の75%以上,部位はD1(球部)とD2(下行部),受傷後手術まで24時間以上経過している例,総胆管の合併損傷を伴う例で,死亡率は16%である.

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】